How to cure【実/況/者】 (ページ2)

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ky_発熱_#02 ページ2

買い物自体は
行き帰りも合わせて合計30分ほど。
家中の雰囲気が違いすぎて
俺は家を間違えたのかと問いたいぐらいだ。

寝室を覗くとご丁寧にマスクをした
彼女が小さくなって寝ていた。
明らかにしんどそうだ。

「…あ、おかえり。」

どうやら寝てはいなかったみたいで体を起こした。

「うん。ただいま。早速だけど薬、飲も？」

「うん。」

返事を聞いてから水を持ってくるためキッチンへと向かい
すぐに戻ってきて
袋の中から紙袋を取り出して裏の説明書をもう一度確認した。

ごはんはしっかりと食べていたので
彼女の手に規定量の錠剤を置いて水とともに飲んでもらった。

「薬嫌い…」

顎まで下げたマスクをすぐに戻した彼女。

「好きでたまるか。」

その後はすぐベットへ横になった。
いつもの笑い声が聞こえないだけで
こんなにも寂しいものなのかと身に滲みて感じる。

すぐに使えるようにと冷やされて販売されていた
まだ冷たい冷えピタを1枚取り出し
髪の毛がくっつかないようにと
おでこにかかったものを少しはらった。

「あっつ。」

おでこを触ると直に体温が伝わってくる。
少しだけ表情が柔らかくなった。

「ありがと、――――。」

実況仲間に知られるとからかわれそうな
"キヨ"ではない名前の方からとったあだ名。

「全然。早く元気になってよ、A。」

少し笑った彼女の顔を見てから
ゼリーだとか、さっき開けた冷えピタは冷蔵庫へ。

あまり見続けていても寝れないだろうし
何かあったら電話鳴らして。と
一声かけてから隣の部屋で編集を終わらせ
他の連絡で埋まったスマホの通知バーを見て少し安堵した。

隣の寝室を覗くと変わった様子もなく彼女が横になっていた。

「ん…編集終わった…？」

「まだ寝てなかったの？」

「寝れないの…笑」

少し薬が効いて楽なのかヘラヘラと笑っているが
いつもの彼女ではない。

「終わったよ。…だから。」

同じ布団に入った。

「一緒に居ようか。」

「風邪移るよ？」

「今更だな。」

彼女が折れた。

「…看病はする。」

胸元へ素直に飛び込んできた彼女は
どんな女優さんよりも可愛い。

「頼んだ…笑」

ふわふわと柔らかい髪の毛は無性に撫でたくなる。
というよりもうすでに撫でている。

寝れない。と零していた彼女はこれだけで寝てしまった。
ゆっくりとした呼吸は俺も心地が良い。

そして絶対にこの彼女の可愛さを知るのは
俺だけで良い。と今日は一日に何度も心に決めた日だった。