1方し殺 ページ7
短針は、キミとまた会えないことを暗喩するに値する数字を指していた。
キミは照れ屋さんだから。
きっと今日も、理由を問うと忙しかったの一言で済ませてしまうのだろう。
『…帰ろ』
視線を下ろすと、おろしたてのワンピースとヒールが覗く。どこか泣きそうで、燻んだ色に見えるのは、今の落ち込んだ気分のせいだろう。
これでキミと会えずに一ヶ月が経つ。
キミは一人を愛すことのできない人だ。わかっている。しかし自分が当たり前に無くとも、キミが普通で居られることが心底腹立たしい。
溜息を溢し、ドアを開ける。
がちゃ
「随分と早かったな。」
キミと会いたい日になんで態々コイツと顔を合わせなければいけないんだ。
何も言わずにベッドにダイブする。服に皺が寄るのも、化粧が崩れるのも気にせず、ただただ深い溜息をシーツに吐露した。
スマホのバイブ音が聞こえ、画面を見ると通知が一件。
キミからだった。
体調が悪かったんだって。私に愛想尽かしたからじゃ無かったみたい。心底、安心した。すぐに返信を書く。
「おい、無視すんなよ。」
キミになんて送ろうか。まずは怒ってないことを言ったほうがいいかな。それから、今の体調聞いて、あと
「無視すんなっつってんだろ」
『い"ッ、?』
スマホを壁に投げつけられ、髪の毛を鷲掴みにされた。ぶちぶち髪が抜けたことを暗示する鈍い音が耳に入ってくる。
『離して!!!』
彼の腕を負けじと掴んでみても、ものともせず離してはくれない。
「なんで無視した?」
やっと離したと思えば、今度は詰問。訳がわからない。
無視しただけで何をこんなにキレているんだ。
『別に、なんだっていいでしょ』
また、頭を掴まれた。今度は頭蓋骨が握りつぶされそうなくらいに。
あ
まずいかも。
頭に血が昇っているのか、それとも頭の血の気が全て引いているのかわからないが、頭がありえないほど熱い。それに酷い頭痛に襲われる。
なぜか、はくはくと息ができなくなり意識が飛びかけた寸前で手を離された。
「人間の頭って、案外簡単にグシャって潰れるんだぜ。やってみるか?」
殺される?
今、死にかけた。
紛れもない彼のせいで。
腰が抜けた。
身長の高い彼に嫌悪感では無く、恐怖を覚えた。
声が、出ない。
「お前だけが生殺与奪の権を握ってると思うなよ」
「アイツがお前にとっての幸せである限り、オレは不幸であり続けるからな。」
彼の瞳には、怯えきった情け無い私が映っていた。
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。(プロフ) - ポメさん» 作品を読んでくださり、有難うございます!そこまでストレートに褒められるなんて光栄です。これからもこの作品に乞うご期待を。 (3月27日 23時) (レス) id: c787972aae (このIDを非表示/違反報告)
ポメ(プロフ) - 言葉に表せないくらいに最高です!!!! 次回の更新も楽しみにしてます! (3月27日 6時) (レス) id: 8673ceb004 (このIDを非表示/違反報告)
。(プロフ) - あさん» 作品を読んでくださり、有難うございます!褒め言葉で究極とまで言われてしまうとは、嬉しい限りです。これからもこの作品に乞うご期待を。 (3月14日 0時) (レス) id: c787972aae (このIDを非表示/違反報告)
あ - は〜〜〜え〜〜、なんか、何だ、もうあれです、究極的に好き…。楽しく(?)更新頑張ってください、待ってます! (3月13日 18時) (レス) @page9 id: c9b27d8eb7 (このIDを非表示/違反報告)
。(プロフ) - ヨーグルトさん» 作品を読んでくださり、有難うございます!感想だけでなく、応援まで…モチベーション上がりまくりです!更新は不定期になってしまいますが、乞うご期待を。 (3月11日 23時) (レス) id: c787972aae (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:。 | 作成日時:2024年2月3日 23時