殺し方4 ページ6
びちゃびちゃと吐瀉物がフローリングに広がっていく。
「あっぶね。こえーオンナだぜ」
「洗剤入りステーキ、旨かった。」
いつ、バレたんだ。
「あんな近くに洗剤あったら誰だってわかるだろ。」
『じゃあ、なんでなんの躊躇もなく食べたのよ。』
しばらく間を置き、合いも変わらず彼は飄々として言った。
「愛してるからだよ」
なにかが切れた音がした。
気づいた時には彼の頭をキミのお気に入りの灰皿で殴っていた。
『なんで、なんで私ばっかりこんな…！死ね、死ね！！！』
何度も何度も力任せに彼の頭に打ちつける。
血飛沫が四方八方に飛び散り随分凄惨な現場になっているが、そんなこともお構いなしに腕を振り下ろす。
涙で視界が狭まり、ぼやけ始めたところで手を止めた。
プラスチックのように無機質で温度を感じさせない、ただただナニカに包まれる感覚に陥った。
「可愛そうな、Aチャン。堕ちるとこまで堕ちたなァ」
嗚呼、やっぱり死んでくれない。
絶望を通り越して口から乾いた笑いが溢れた。
そして彼に言われて、気づいた。否、気づいてしまった。
「ア、気づいた？もう手遅れだよ。怒りに任せてオレを殺してる時点で、アンタの脳内に殺人って選択肢が入り込んじゃってんだからよ。」
私はキミと一緒にいたいから。ただそれだけだったのに。
これじゃあ、ただの犯罪者じゃないか。
『ちがう、私のせいじゃない。』
「なんだア？責任転嫁しようってのか？お前が愛してやまないアイツに？ひでえ奴だな。」
ちがうの。キミのせいにしたいわけじゃない。全ては目の前の彼が悪い。キミの魂を奪おうとしたのはコイツで、私をまるで犯罪者のように仕立て上げたのもコイツ。
自身に言い聞かせるように、彼に罪を全て押し付ける。
そうでもしなきゃ、明日キミに合わせる顔がない。
「今度は、塩酸入りのステーキ楽しみにしとくな。」
悪気が一切含まれていないのか、それともただの嫌がらせで言っているのか。後者だと思うが、疑ってしまうほどに晴々とした満面の笑みで言われた。
拳を痛いくらい握りしめて、怒りを抑える。
明日はキミとのデートだ。
こんなことで精神を擦り減らしていたら、楽しめるものも楽しくなくなってしまう。
キミからの連絡が来た試しがないことも、キミが毎日家ではないところに足繁く通っていることも、全て気づかないフリをした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 48人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
。(プロフ) - ポメさん» 作品を読んでくださり、有難うございます！そこまでストレートに褒められるなんて光栄です。これからもこの作品に乞うご期待を。 (3月27日 23時) (
レス) id: c787972aae (このIDを非表示/違反報告)
ポメ(プロフ) - 言葉に表せないくらいに最高です!!!! 次回の更新も楽しみにしてます！ (3月27日 6時) (レス) id: 8673ceb004 (このIDを非表示/違反報告)
。(プロフ) - あさん» 作品を読んでくださり、有難うございます！褒め言葉で究極とまで言われてしまうとは、嬉しい限りです。これからもこの作品に乞うご期待を。 (3月14日 0時) (レス) id: c787972aae (このIDを非表示/違反報告)
あ - は〜〜〜え〜〜、なんか、何だ、もうあれです、究極的に好き…。楽しく(？)更新頑張ってください、待ってます！ (3月13日 18時) (レス) @page9 id: c9b27d8eb7 (このIDを非表示/違反報告)
。(プロフ) - ヨーグルトさん» 作品を読んでくださり、有難うございます！感想だけでなく、応援まで…モチベーション上がりまくりです！更新は不定期になってしまいますが、乞うご期待を。 (3月11日 23時) (レス) id: c787972aae (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：。 | 作成日時：2024年2月3日 23時
