ゼロ距離まで【3】

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Aは唯月に本心をぶつけたが唯月はよく思わなかったようで一層声を張り上げた。

「そういうところがウザいんだよ！Aはモデルにスカウトされてモデルはやりたくないからって私を推薦して。なにそれ…？！私への当てつけ？あんたからってだけで私は…、」
「ごめん。そこまで気が回らなかった。唯月の夢を応援してるつもりだったんだけど…迷惑だったみたいでごめん。」

確かにスカウトはされたが人前に出ることは嫌いだ。それにあの時唯月を紹介したらスカウトマンは両手を掴み、嬉しそうに何度もありがとうと言ってきていた。だから唯月を紹介して正解だと今の今までそう思い続けてきた。
でも唯月にとってはプライドが傷つきAという背中を追いかけているとそう感じてしまったのかもしれない。
もう一度ごめんと伝えると唯月は不愉快そうにムッとして顔を横に向けた。

「もういいよ、そもそも本当に叶えたかった夢なのかもわかんないし。いろんなもの犠牲にして失ってもう後戻り出来なくなって。だから前に進むしかできなかった。」
「戻ってもいいんじゃないかな？無理して進む必要ないと思う。」

Aはにこりと笑みを見せるとさくらもそれに同意した。先生の手が一瞬動いたように見えたがまだ起きる気配はしない。

「そうだ、親日の棚橋と柴田の泣ける話があるんだけどきく？」

いきなりさくらがプロレスの話をするもんだから耐えきれず笑うと案の定どうでも良さそうな口調で唯月も聞かないと一蹴りし会話は終わってしまった。

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