ゼロ距離まで【2】

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──3月3日


今日も授業が始まった。

あの後教室に帰ると隼人が大丈夫かと駆け寄ってきた。保健委員だから手当をしていたとだけ言うとなんでAばっかりなんだと愚痴をこぼす。たしかに何故なのかと言われたら分からない。ただ監きん前から他の生徒よりは先生と話したり澪奈と近かったからでは無いだろうかと考える。それをわざわざ隼人に伝えることも無いだろうと教室の隅で体を丸め眠りについた。

朝起きると誰かが朝ごはんを届けてくれていて全員がこんな冷や飯うんざりだと言うように口に運ぶが餓死するよりマシだろう。
まだ二日しか経っていないがあと何日続くのだろうかとぼんやりとAは考えた。

いつものダンスも踊って授業が始まり、先生は教室できちんと睡眠が取れているのか心配なようだ。

「昨日は寝れたか？まぁ暖房完備でも雑魚寝はきついか。」
「くだらねぇ事言ってないでさっさと解放しろよ。」

家にも帰れず兄弟の事が心配なのだろう。隼人のイライラはいつ爆発してもおかしくない。そんな事を知ってか知らぬか先生はそれなら早く真実を掴まないといけないと言って隼人の肩を叩いた。

「じゃあ今日の課題を発表しまーす。A電気を消してくれ。」

薄暗くなった教室の黒板にうつるのはドーピング疑惑に使われた動画。
これは香帆が投稿したもので昨日の一件があってか香帆はビデオを直視することが出来ず俯いている。
しかし撮影したのはまた別の誰かだと昨日香帆が言っていた。その犯人は誰なのか。今日は撮影者を探すことになるようだ。

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