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先輩にいびられた、ってんじゃなくて同期がイタズラに蹴ったのが当たったっていう方が言いやすい。
ましてや、若武がやりかえしたら五分五分になってしまう展開で、砂原が“偶然”やり返してくれている。
「そこで、先輩が砂原のこと言ったら、じゃあ散々砂原が大袈裟に謝り倒してる若武のは誰が当てたんだってなるだろ？」
黒木が軽く目を伏せながら笑みをこぼした。
「先輩も言えないし、若武はスッキリするし、砂原は若武に謝る演技するだけだしって？」
美門がそう言いながら綺麗な顔でクスクス笑うと、隣テーブルの女子の声が一層大きくなった。
「ああおれ、勝てねえなって思った。」
ポツリとこぼした言葉にみんながうーん、と納得する。
「同じ状況で先輩に注意することならできる。けど、あいつは俺がプライド傷つくって見抜いて行動したんだ。小学生だぜ？シンプルにすげえよ。」
そう締め括った若武に、七鬼はへえ、勉強になった。とやはり天然な発言をした。
「俺らはさ、ぶつけられたはずなのに砂原にキレてない若武が変だと思って聞いたら今の話知らされて」
「その後先輩は砂原に目をつけるんだけど、あいつポジションに興味ないから痛くも痒くもなさそうだったよね。」
「ポジションに興味ないのは黒木もだろ。」
そこで、待ち構えたかのように授業前のチャイムが鳴った。
「あぁ、もう時間だ。」
「砂原かっこいい談義になったね」
「本当だ」
「事件がないのは良いことだよね」
「安心しろよ、そのうち俺がデカいヤマ持ってきてやるから」
「そう言ってボランティア団体になりかけたじゃねーか」
「ほら、席戻して」
…＿＿＿
「…って、昔みんなから聞いたんだけど本人は覚えてる？」
「…ぅ、んー……？」
陽のあたるソファに腰掛けて、うつらうつらしていた砂原は、目を閉じたままフッと微笑んだ。
「……忘れた。」
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作者名：祈島世字 | 作成日時：2023年9月14日 17時
