veil of darkness 3[ブラッドハウンド] ページ47
オクタンは全員のレジェンドがパーティに居ることを望んだらしい。ブラッドハウンド以外にも乗り気でない者は複数名いたが、彼の(正確には父親の会社の)力を持ってしてそれは覆されたようだ。フォーマルな衣装に、この人らしくゴーグルとガスマスクもそれらしくアレンジが加えられていて……何というか、すごく。
「……格好いい」
「……すまないA、聞こえなかった。もう一度」
「聞こえてましたよね」
くすくすと笑う声が隣から聞こえる。まだお酒は入っていないというのにこの有り様だ。これから更にエスカレートする可能性が脳裏を過って今からため息が出そうになる。しかし、そこではっとした。私にはもちろん相手はいないが、それはこの人もそうだとは限らないだろう。他の人からその場で声を掛けられても可笑しくはない見た目なのだから、既に隣に立つに相応しい人がいるのではと勘繰ってしまう。正直、聞くのには相当な勇気を必要とした。けれど……私はまだこの人を独占出来るほどの自信は無いのだ。
「あの……!」
「私が参加したのは……本当はあなたがいると聞いたからだ」
けれど、私の言葉に被せるようにこの人は口を開いた。
「え……」
「他の誰があなたを誘うとも知れない。その肩に……触れる者がいるのだと思うと……ふふ、愚かなものだな。私がこんな気持ちになるとは」
あなたの前だと、どうも上手くいかない。ブラッドハウンドはそう言って私に手を差し出す。
「そろそろ始まる頃合いだろう。A、手を取って」
「……」
無言でその手を握り返す。どうやら私はいらぬ心配をして勝手に落ち込んでいるだけだったようだ。この人は私がいたから、気後れするパーティにも来てくれたのだという。それはもう自惚れても良いことなのではないだろうか。
「ブラッドハウンド、私……」
何かを言いかけた。けれどそれは言葉にはならなかった。マスクを取ったこの人が徐に近付き、そのまま私の言葉を飲んだからだ。一瞬、けれど確かに私の熱を奪ったそれが離れて私は思わず顔を覆う。
「!!」
「それはいつか、私から言わせて。A、今日あなたを帰せなくなってしまう」
その言葉にびくりとして、この人の顔を見る。ブラッドハウンド何とも愉快そうに笑って、私の手を引いて会場へと向かった。
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オーキッド(プロフ) - 最高に面白くかつ文才あふれる読みやすい小説でした。ブラハ沼に見事に落とされました。ファンとして続きを楽しみにしております。 (2021年8月19日 18時) (レス) id: 500cf8b735 (このIDを非表示/違反報告)
名無し70039号(プロフ) - ブラハの小説ってすんごいレアだと思うので素敵な作品に出会えて私感激…胸キュンが止まりません!!!!!更新楽しみにしてます!! (2021年6月18日 10時) (レス) id: 6045cd7502 (このIDを非表示/違反報告)
椿麒麟(プロフ) - 体が痺れるぐらいとても素敵なものを読ませていただきました!更新楽しみにしております! (2021年6月1日 7時) (レス) id: 5450775e17 (このIDを非表示/違反報告)
まるきち(プロフ) - ブラハが好きで楽しくきゅんきゅんしながら拝読させていただきました。とても幸せです(*'-'*)更新楽しみにしております! (2021年5月24日 22時) (レス) id: 27e019c0a7 (このIDを非表示/違反報告)
たろう - 3ヶ月程前に見つけまして密かに読ませて頂いておりました。ブラハ大好きなので見つけた時は嬉しくて…読んでみたら私の中のブラハのイメージそのもの!ドキドキしながら何度も読ませて貰っています!お忙しいと思いますが続き楽しみにしています(*´`) (2021年5月23日 20時) (レス) id: b492fc9660 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:無し者 | 作成日時:2021年1月5日 22時