1つ目の本音。 ページ3
訓練ブースに置いてある画面を眺める。
そこには戦っている米屋と鋼が写っていた。
壁に凭れ掛かりながらため息をつく。
ほんっとに、視線がうざい。
知ってる人はほとんどいないが、俺はサイドエフェクトを持っている。
それが、感情視認体質。
人の視線に色がついて見える。
そのせいで視界にはいつも色のついた線が横切る。防犯センサーとしてついてたりする赤外線とかと一緒なのかな。
その色によって感情がわかる。
基本的には、暖色系ならば、プラスな感情。
寒色系ならば、マイナスな感情。
複数の色が混じって見えることもある。
色が何を示すのかは直感で大体分かる。
要約すると、その人が向けている視線の先にあるものへの感情が分かるのだ。
カゲのSEと似ているが、大きく違うのは自分以外への感情も分かるということ。感情を抑えてにこにこ取り繕っているのを見るのは中々滑稽だ。
その視線が、さっきから入り混じっているのだ。
俺があんまりここは来ないことや、A級隊員であることも関係するだろうが、流石にうざい。
もう少しこの明け透けな感情を隠すことは出来ないのか。
SE持ってなくてもわかるだろ、これは。
重たい桃色や暗い紫色が、俺へと向けられる。
そちらの方へ笑顔を向ける。
これは広報の仕事みたいなもの。うん、嵐山さんがやってるのとそう変わんない。
外面だけ見た、恋慕に満たない感情。
それに気づかない嫉妬心。
A級であることへのただの好奇心や妬み。
ただ笑顔でいれば、殆どの人は騙されるし勝手に印象を決めつけ、優しい付き合いのいい人であると勘違いする。
ほんとにバカみたい。
相手に好意を向け、笑顔で話している。
その相手は自分に嫌悪感を抱いてると知らずに。
"滑稽なことだ。
表情と色が合っていない。
全て偽り。
それに気づかない人々。"
俺だけがわかる、全てが嘘なんだと。
俺には分かる。
だから、俺も嘘をつくんだ。
本心なんか見せてやるかと、
笑顔を向ける。
偽りだとバレないように。
SEのことを知っている人は上層部を抜けば、片手で数えきれる。
俺は
騙されてなんかやるものか。
騙される方が悪い。
一生この姿を演じ続ける。
この綺麗で綺麗で美しい理想の人間を。
俺が憧れ続けた、大切な者の姿を。
そんな事を考えているうちに鋼が勝ってブースから出てきた。また、いつものように微笑んだ。
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作者名：レモンはちみつ | 作成日時：2022年3月22日 0時
