三つ目の灯火 ページ3
｢ぐ、…ぅ、ん？｣
｢おや目が覚めたかね。｣
目を開けると見慣れない部屋にいた。
ここは本殿ではないようだし、恐らく八百万界でもないのだろう。
しかし、となるとここは何処だ。
私はあの時悪霊に勝利したはずだ。
その後、私も力尽きて、……。
｢どうだい、体の具合は。｣
｢……問題ない。貴方が私をここまで運んだのか？｣
｢そうだ。外傷はなさそうだが、倒れていたのでね。｣
｢…感謝する。ここは……？｣
｢ここは第七師団隊舎だ。｣
聞きなれない言葉に眉を顰める。
助けてもらったがすぐに主様の元へ戻らねばならないのだが。
どうも体に違和感がある。
彼には大丈夫だと伝えたが、何か、嫌な違和感が付き纏っている。
が、目の前の男を放っておく訳にもいかない。
あの、と声をかけると男と目が合う。
その瞬間、頭に何かが思い出されそうになる。
恐らくこの感じは……、
｢…懐かしい。…なぜだか分からないが私はここに居たいらしい。……どうだ。｣
かなり突飛押しもない私の発言に男は一瞬目を丸くしたがすぐに細めて笑った。
｢……なるほど、なるほどな。君をこのまま外に放り出すのも危険か。
ふむ、我々は軍隊だ。それなりの訓練や現場を見ることになる。それでも君は耐えられるかい？｣
｢女の身ではあるがそれなりの戦場は経験した。ここにいること、必ず後悔はさせない。｣
そう私の答えを聞くと彼はいいだろうと頷いてくれた。
そしてそのまま右手を出した。
握手だろう。
私もその差し出された手を握ろうと手を出すが、すぐに引いた。
｢あ、…手袋、…えっと、｣
｢手袋？ああ、していたが、随分と汚れていたので洗濯に、……。｣
｢…そうだったのか、………手袋がないと私は貴方に触れられない。すまないな。｣
訝しげな目線で私を見つめる彼に私は目を逸らさず見つめ返す。
仕方ないな、と彼は部屋を出て行った。
.
｢危なかった…、もう少しで彼に火傷を負わせることになった。｣
一人になりふぅ、と息をつく。
身なりは変わっていなかった。ただ、手袋がなかっただけ。あ、マフラーもなかった。
マフラーも同じ理由でないのだろう。
さて、これからどうしていこうか。
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作者名：きょーりん | 作成日時：2019年3月23日 21時
