十七個目の火の玉 ページ17
俺達の初戦は圧倒的な完全勝利だった。
あのロシア人が俺たちを薄ら笑いながら言うもんだからどれだけ強いのかと思っていたが……。
そんなことは置いておいて、俺達の心配は目の前の少女にあった。
スチェンカに参加すると聞かなかった彼女は、ロシア人からの言葉により燃えて俺が加わるはずだったチームで参加することになった。
四人が向かい合って並ぶとAちゃんの背丈だけがガクンと下がっていて、目立っている。
周りの野次馬もザワザワと騒がしくなる。
まあ子供が、それに女の子がこんなむさ苦しい所にいて、スチェンカやるってんだからなぁ。
あの時ロシア人の挑発に一番物騒なことを言っていたから、怒ってると思う。
Aちゃんの力はまだまだ未知数で、だからこそ怪我とかして欲しくない。
……アシㇼパさんより少し大きいくらいの女の子だ。
まだ……守られるべき子供なんだ。
『用意！』
ドクンと心臓がなった。
なんでか少し緊張する。
大丈夫だろうか、あの子が大の大人に一発殴られでもしたら、俺は……。
『殴れェ！！』
『がふっ、！』
｢え、…！？｣
始まりの合図と共に相手の男が柵まで吹っ飛ばされた。
しん、と周りが静かになる。
野次馬も相手もチームメイトも飛ばされた男と飛ばした相手を交互に見やる。
男の腹から煙が立っていて、丸く赤くなっていた。
｢なんだ？こんなものか？｣
男をぶっ飛ばしたのは、Aちゃんだった。
こき、と指を鳴らしてから構える。
｢こんな小娘に負けるような人間ではないだろう？かかってこいよ。｣
ロシア人に意味が何となく伝わったのか一人がAちゃんに飛びかかって行った。
腕まくりをしているから見えている腕は細くてすぐに折れてしまいそう。
そんな腕で男の腹にアッパーをかますのだから周りはドっと沸き上がる。
｢なんだ？スチェンカとは殴り合いのことじゃなかったのか？
……微温い、実に微温いなあ。｣
そう言うとAちゃんは隣にいた仲間を一発殴った。
不意をつかれてその男は一瞬でダウンしてしまう。
『おい！どういうつもりだ！』
『貴様…！！』
残されたロシア人がAちゃんに詰め寄る。
が、Aちゃんは目にも留まらぬ早業でいつの間にかその二人もダウンさせたのだ。
呆然と見ている俺たちにあどけない笑顔を向けたAちゃん。
｢いやぁ、みんな同じ顔で敵が味方かわかんなくなってしまった！｣
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作者名：きょーりん | 作成日時：2019年3月23日 21時
