二十一本目の火柱 ページ21
宿のベットにAちゃんを座らせて俺もその隣に座る。
｢あの、先に言っておくが、他の人を信用してないとかじゃない。
ただ、……杉元さんに話すのが一番いいと思ったから……。｣
｢うん、わかってるよ。｣
そう言うと安心したようにAちゃんは口を開く。
｢やっぱり、私みたいなのがみんなといるのはダメなんだろうか。｣
｢え、｣
｢私がここに来る前は周りはみんな私みたいだったから、…よくわからなかったが、生身の人間といるのは、……やっぱりおかしいか！｣
ニコリと笑ったがどこか寂しそうで、Aちゃんの体はとても小さく見えた。
｢…そんなことない、鯉登少尉もちょっと驚いただけだし。気にしなくていいよ。｣
でもと続けようとするAちゃんの肩を掴む。
｢心配することないよ。きっと明日には普通に接してくれるはずだ。そうじゃなかったら俺が一発殴ってやるさ。｣
だから大丈夫、と念押しするとAちゃんは目を伏せた。
そっと肩の手に自分の手を重ねてそっと下ろす。
｢ありがとう杉元さん。｣
その俺に向けられた笑顔はいつもの笑顔だった。
｢時間を取らせてすまない。明日スチェンカ頑張ろうな！｣
｢明日はしないよ……。｣
どうしてそんなにスチェンカ好きなの？
つまらないって言ってたじゃん。
晴れた表情のAちゃんを見送って俺もベットに横になった。
あの時会った男……、恐らく刺青の男だ。
握手をしたときに伝わる奴の強さに、思わず体が震えた。
もしかしたら明日にはスチェンカに参加しに来るかもしれない。
……いや、恐らく来るだろうな。
…アイツと戦いたくてウズウズすんなぁ。
俺が戦う前にAちゃんが突っ走って行きそうだけど。
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作者名：きょーりん | 作成日時：2019年3月23日 21時
