十四個目の火の玉 ページ14
「大丈夫か!?」
「大丈夫だ、殴られてもいない。」
私が谷垣さんにそう答えるとどうしてそんなに冷静なんだ、と呆れた表情を見せた。
月島さんがすぐにアシㇼパさんを連れ去った男の写真を取り出し、ロシア人に聞く。
が、先程月島さんに吹っ飛ばされたロシア人がよろけながらも立ち上がる。
『日本の兵隊が俺達の村に何の用だ?』
「何言ってるのかさっぱりわかんねぇぞ。」
酒の影響か顔が赤い。
叫ぶのも酒のせいだろうか。
『出ていけ!』
「俺に触ったらぶっ飛ばすとこいつに伝えろ月島軍曹。」
そんな物騒なことを通訳させようとするが間に合わずロシア人は杉元さんの胸ぐらを掴んだ。
ゴッ!!!
ゴガァッ!!!
ゴンッ!!!!
杉元さんが殴るとロシア人も反撃をした。しかし最後に杉元さんにより強い力で殴られてダウンしてしまった。
「ここはダメだ。酔っ払いしかいねぇ。近所へ聞き込みに行くぞ。」
杉元さんはクルリと方向転換をして建物を出ていく。
「おい、古火。」
「月島さん。」
「何故抵抗しなかった?」
最もな質問だ。
鉄のプレートを真っ二つにするほどの私が抵抗すればすぐにロシア人は倒せたはず。
「そんな風に戦ってこなかったからだ。」
私の短い腕をどれだけ振り回してもあのロシア人には当たらない。
それなら殴ってもらったほうが好都合なのだ。
私の体にはそんな戦い方が合っている。
「私は死なない。だから、」
「だからといって無闇矢鱈に自分を傷つけるな。」
いいな、と私の肩に手を置いて杉元さん達のほうに走っていく月島さん。
……なるべく、だな。
.
エノノカちゃんが緊急事態を伝えに来たのはそれから数分後のことだった。
ロシア人に犬を盗られたらしい。
犬ぞりの中でも重要な役割の犬を盗まれたようでエノノカちゃんとお爺さんの表情は暗い。
「おしゃべりロシア人を探そう。そいつも恐らく仲間だ。」
「アッ!おしゃべりロシア人だ!」
「あいつ?」
こちらに歩いてくるロシア人が盗人の仲間、おしゃべりロシア人だとエノノカちゃんは指をさした。
『ついて来い。』
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作者名:きょーりん | 作成日時:2019年3月23日 21時