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十二個目の火の玉 ページ12

山道を上へ登るのは予想以上に体力を使うものだった。
子供を抱えた谷垣さんに手負いの鯉登さんに手を貸す月島さん。
早く逃げるなど無理な話だ。



「来たぞ月島ァ!!」


焦ったような鯉登さんの声に杉元さんが撃つが当たらない。







「ここは私に任せてくれないか。」

「あっ、Aちゃん!」


力も使わないと鈍る。

クズリの前に立ち塞がると危険だ!と杉元さんに腕を掴まれる。


「大丈夫だ。私は強いから。」



こちらに走ってくるクズリに視線を戻す。






「エノノカ!」

「ヘンケ!」





しわがれた声にあの女の子が反応する。

どうやら女の子が橇から落ちたのに気づいて迎えにきたのだろう。
犬ぞりにみんなが乗る。



「Aも早く乗れ!」


谷垣さんにそう言われるがどう見ても定員オーバーだ。




「私はいい!橇の跡を追う。行け!!」



私は死なない。

そんな妖の心配をするなら生身の、命のある人間の心配をした方がいい。


私が叫ぶと犬ぞりは進んでいく。
とても速い速度だ。






ブガァウ!!!と飛んでくるクズリにわざと袖をまくり腕を噛ませる。


クズリの口内が腕に触れた瞬間、ジュゥゥと焼ける音がした。




身の危険を感じとったのか素早く腕から離れるクズリ。



「どうした。ヒグマより強いのだろう?私はヒグマとは戦ったことがないが。」


クズリはギャウギャウと吠えるだけで襲いかかっては来ない。









……興ざめだ。


やはり動物というものは人間よりも人ならざるものを感知するのが上手いらしい。




「はあぁぁ……予定よりも早く終わってしまった。……歩いて行こうか。」




真っ白な平地に橇の跡がくっきりと残っている。



「ん?」




遠くの方で人影が見えた。

一人のようで何処かに向かって歩いている。


先程のアイヌやロシア人を見るとどちらも犬ぞりや馬を連れていた。


だからか余計にその人影に違和感を覚える。


遠いはずなのにシルエットはよく見えるのでかなり図体はでかい事がわかる。





「……まあいいか。いまは杉元さん達を追いかけなくては。」


しかしさほど興味もわかず、杉元さん達と合流することに決めた。

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作者名:きょーりん | 作成日時:2019年3月23日 21時

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