* ページ20
「……別に、全部が全部光太郎のこと考えてるわけじゃないし」
「えっ、そ、それはAにとって由々しき事態じゃないかっ!?」
「失礼っ!」
「じゃあ他に何を考えてそうなるんだ!?」
守沢に問われ、守沢の顔を数秒見つめてから視線を落とした。
「………勉強とか、いや〜な感じの先生のこととか」
喉にでかかった気持ちは咄嗟に仕舞い込んだ。
「む、勉強?そうか、なるほど…それならいつかまた、勉強会でもしようじゃないかっ!」
「……!」
「新しい一年生が入ってきて、後輩ができたらな…勉強ができる頼れる先輩だと思われたいっ!」
「………………」
意気込む守沢とは裏腹に、心に渦巻く戸惑いと期待は大いに崩れる。
新生活に向けて心躍らせる守沢の明るい表情に免じ、無理に口角を上げた。
「…そうだね、久しぶりにやろ」
…無理に背伸びしようなんて、こいつの前では無謀なんだった。
やっぱり細かいことは気にせず、ありのままの自分で接するのが私らしい。
こうやって、何気ない会話をする。それだけで今は、満足することができるのだと。そう思うことにした。
32人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:5674C | 作成日時:2022年7月18日 18時