プロローグ1 ページ1
夕暮れの道筋。自転車のハンドルを握りしめ、熱弁をする少女がいた。
丈の合わない学ランを着た男に向けて＿＿＿＿
「やっぱ初期のバトルホッパーよ！BLACKの相棒はなんと言っても、あのフォルムが素敵！」
男に語るは、私の大好きなヒーロー、『仮面ライダーBLACK』の相棒のバイクについてだった。
「うーむ、そうかぁ…俺はロードセクターも結構好きなんだけどな…」
「あ〜…はーい出ました、最新が好きとか言うミーハーなの。男の子って心擽られるかっこいいのとか見るとすーぐそう言うんだから、薄情ね」
「人聞きが悪いな！ホッパーだって好きだぞ！」
「どっちが良いって話だったら、セクターを選ぶんでしょーが！」
男は弁明の言葉へ突っかかる私に嫌な顔一つさえしない。
「まあ…BLACKは情に熱いから、ホッパーを好んでいるよな」
「そう！もう…そこが！好きなの！BLACKのかっこよくて好きなところは優しいところ！」
「Aは優しい男が好きなのか？」
A。そう呼ばれた私は、顔を顰める。
「違うよ、悪と戦う南光太郎が好きなの！」
『南光太郎』とは、『仮面ライダーBLACK』を題する特撮に登場する主人公。見目はごく普通の人間だが、中身は改造人間、仮面ライダーの正体である。
彼の整然とした姿を思い浮かべながら語っていた私は益々、言葉の一つ一つに熱が篭っていたと思う。
「光太郎には杏子という想い人がいるが………」
「……………」
…それは、男の心が無いとも言える一言だった。
気づいた時には憤りが募り、拳をデリカシー無し男の肩に振り翳している。
「い…っ！なぜ叩くんだ！？痛い痛いっ！」
「なんでそう冷めるようなこと言うのッ！？『みたいな人』って言ってんじゃん！酷い守沢！最低！人でなし！」
「そこまで言うか！？」
守沢。
そう呼ばれた男は、私の理不尽さに音を上げた。
守沢千秋。私の中学からの友人で＿＿＿一番の……友達。
そんなのお構いなしと言いたげに、その後も私は守沢の肩を八つ当たりのように叩き続けた。
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作者名：5674C | 作成日時：2022年7月18日 18時
