7【一人称視点】 ページ10
火曜日の祝日。早朝。
商店街に連れ並ぶ数々の出店を通り過ぎ、胸を弾ませながら目的の場所へ一直線で駆ける。
私は目当ての彼の姿を思い浮かべ、閑静な場所でくるりと一回転した。
『八百屋』に行かなくては…!
『高峯』氏経営の八百屋の息子、高峯翠に会いたくて、昨晩からずっとうずうずしていた。
訪れる理由の口実としては、一昨日八百屋の手伝いをした際に置いて忘れてきてしまった自分のパーカーを取りに行くため。
本音は…大好きな高峯翠に会いに行くため。
一昨日会って会話したばかりなのに、遠い昔からの再開のように心を躍らせている私は、不自然だろうか。
否、誰でも、好意を寄せる者に会える日があるのなら、その日を待ち望む他はない。
心が弾む、胸が弾む以外にも何か形容したい。
ああ、この気持ちはなんなんだろう。表そうとも、上手い例えが出てこない!
でもいいや!言葉に表せなくとも、私の想いはここに、ちゃあんとあるんだもん!
高峯………高峯!!
___高峯ーーーーっ!!
「おおーーーーーい!高峯ぇぇーーーっ!おはよーーーーございまーーーすっ☆」
「!?」
叫んでいないはずの自分の声が、児玉のように跳ね返ってきたのかと思い肩を震わした。
けれども明らかにその声は自分の声でない。山彦でもない。
私の目先にいるのは、間違いなく夢ノ咲学院の生徒。
人目を憚らない大声とその気迫に立ち止まった私は、即座に物陰に身を隠し、陰から覗いた。
な、なんて近所迷惑な人……!
ネクタイが緑のため、三年生の先輩だろう。
こんな場を弁えない先輩が高峯の知り合いなのかと、失礼を及びながらそう思った。
「……ん?」
「!」
気づかれた…!?
物陰から見えてしまっていたかもしれないコートの裾を体側に引き寄せ、覗き見を止める。
「ううむ、高峯のやつ…冬だから布団から出たくないんだな?」
大きな独り言をぼやいているのが聞こえ、再び顔を覗かせた。男は頬杖をついている。
高峯の先輩、だよね、多分。
急用か、いつも忙しそうにしてる高峯だから部活とかアイドル活動の先輩だろう…。
人見知りである自分は、縮こまった勇気を振り絞り、男に歩み寄った。
「あ、あああ、あの…高峯に、なんの御用でしょうか?」
声音が震えるのを自覚しつつ声をかけた。
雰囲気といい仕草といい、妙に威圧感のある男は、私の姿を見て頬杖をついたまま首を傾げた。
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5674C(プロフ) - たまたまきんきんさん» 嬉しいお言葉恐縮です!ありがとうございます!! (2022年5月23日 12時) (レス) id: e6d0696709 (このIDを非表示/違反報告)
たまたまきんきん(プロフ) - やばい、まだ全部読んでないけどやばい、何このときめき、やっば。狂いそう。 (2022年5月18日 14時) (レス) @page27 id: 4c9c318806 (このIDを非表示/違反報告)
5674C(プロフ) - 彩さん» 意識しました!!!!読んでいただきありがとうございます! (2022年3月21日 0時) (レス) id: e6d0696709 (このIDを非表示/違反報告)
彩 - なんだかめっちゃ青春!!! (2022年3月20日 16時) (レス) @page48 id: be844da8b2 (このIDを非表示/違反報告)
5674C(プロフ) - ちゅーしちゃうぞ♡さん» ありがとうございます!!最後まで楽しんでいただけて、とっても幸いです!!^ ^* (2022年1月17日 6時) (レス) id: e6d0696709 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:5674C | 作成日時:2021年12月27日 14時