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それは、初めての瞬間だった。
初めて他人にこんな顔をされたと思う。
しかもそれは、私に向けている。
癖になってしまいそうな柔らかな表情に、感動を覚えた。



救いの手なんて、一生ないと思っていた。

だが目の前の彼からは私を救ってくれそうな、そんな自信という自惚れが湧き上がった。


「____」


ツーっと、目頭が熱くなったのを後に、何かが頬を伝った。


「え!!!い、あ、いやっ、泣かせるつもりは…!!」


泣いているのか、私。

こんな大の大人になって、汚い格好で地べたに座り込み、見知らぬ男の前で無防備に泣くなんて。

涙するって、こういう感覚なんだ。

泣いたことなんて一度もない。
自分は涙よりも根性だった。そう育てられていた。
泣く暇があるなら行動しろ、と母の言葉がまた木霊した。



目の前の彼がいると、そんな母の言葉は無意味に感じる。



何が強さだ。何が根性だ。




母の教えとは、何なのか。
この男のせいで、母の存在がもっともっと遠くになっていくではないか。


やめてくれ、この感覚、たまらない。
この男が、大きな存在に見える。


助けを乞うつもりなんてなかったんだ。
泣くつもりもなかった。

他人には頼ってはいけない。

自分に生きる価値はない。ごみ同然だから。





なのになぜ、そんなに優しいんだ。

合理的に考えれば、私に時間を尽くす意味など全くないじゃないか。








__そんな彼の、たった一言に、理性を奪われるなんて。





涙はそれでも止まらず、私は彼に愕然させられるであろうほどの嗚咽を、その後幾度も繰り返した。

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5674C(プロフ) - Umiさん» 嬉しいです!ありがとうございます!! (2022年3月4日 10時) (レス) id: e6d0696709 (このIDを非表示/違反報告)
Umi(プロフ) - めっちゃキュンキュンしてしまいます(˶'ᵕ'˶) (2022年3月3日 16時) (レス) id: a9ba311e8f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:5674C | 作成日時:2021年11月17日 2時

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