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「就職って…アンタ、ここまで来といて、ぜ〜んぶ無駄にする気?
お母さんは?お母さんの想いはどうなるのよ。親孝行もしないで、無鉄砲に社会に出るってなったら…」

「何がいけないの?」

「あ?」

「就職の、何がいけないの?」


母は私の澄んだ声音に驚きつつも、顔を突っ張らせながら言う。


「給料が少ない、雇ってもらえるところなんて極小なのよ、高卒って。親の力が無くなったアンタが苦労するのなんて目に見えてるわ」


高卒でも雇ってもらえるところは沢山ある。ましてや、私の高校であればそこそこ良い就職先は多々ある。

就職指導の先生に偏差値の高い私の学校と就職の関わりについての話を聞いた時、「これだ!」と、瞬時に直感めいたものを感じた。

収入は少なくなり他とのギャップも感じて、辛くなることがあるかもしれない。

だが、私にとっての幸せはそこにある、と、その時の私はそう筋のない予感をしていた。


「確かにお給料は大卒に比べたら少ないし就職の幅は縮まる。
でも…ここから通える学校に行って、またお母さんに指示される方のが、イヤだ」


吃りもせずに自分の意思を真っ直ぐ告げる私の姿に、母は、驚愕の表情を見せていた。
今まで何も文句も言わないがために、母は私を搾取対象として見ていたに違いない。
大人しい性格に安住し暫く放っておいた間に、人形としての皮が破れ、いつの間にか感情を持った人間になっていたことは、言うまでもない恐怖である。

母は黙ったままだった。


「…小さい頃から、ずっと、ずっと、ずーっと、私の気持ちなんて一切聞かず、命令ばっかりだった。
割り切ってたよ。でもそれは、幼くて知らないことばかりだったから出来たことなの。

今は、もう、成人間近の十八歳なんだよ、私。

もうお母さんの思ってるような子供じゃない。なんでも言われた通りに熟すようないい子じゃない。

お願いだから、大人になった今、私の好きなようにさせて」


自分の気持ち吐露する良い機会だった。
まだまだ言い切らない程、たくさんの想いが溢れてくる。言えば言うほど母への憎しみが湧いてくる。
今までの恨みが、苦しみが、解放されていくような感覚が想像できた。


「………どうして」


私の話に耳を貸しながら俯いていた母は、消えそうな声でそう何かを呟き始める。

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5674C(プロフ) - Umiさん» 嬉しいです!ありがとうございます!! (2022年3月4日 10時) (レス) id: e6d0696709 (このIDを非表示/違反報告)
Umi(プロフ) - めっちゃキュンキュンしてしまいます(˶'ᵕ'˶) (2022年3月3日 16時) (レス) id: a9ba311e8f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:5674C | 作成日時:2021年11月17日 2時

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