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10: 伸ばされた手は。 ページ10






「琴さん、好きです!付き合って下さい……!」






「…………、」




自動販売機に飲み物を買いに来ただけなのに、俺はどうして聞き耳を立ててしまっているんだろうか。


先輩が後輩であろう男子生徒に告白されている。



部外者である俺は直ぐに離れなければならないのに、思わず隠れてしまった。




「あの、返事は今じゃなくても良いので……」


「ん〜〜……、」


「……あ、じゃあ、失礼します。」





どうやら男子生徒は行ってしまったようだ。


だが、先輩はその場所から微動だにしない。





「……あ、小さい子、」




ふいに、先輩は空を見上げて頬を緩め、小さく手を降っている。

先輩、そう呼びかけようとした時、




「うー……、」




先輩はそこに座り込んでしまった。


小さくなってしまった身体に、違和感を覚える。


どうしたのだろうか。


俺の足は自然と前に出ていた。そっと先輩に近づいて、背中に手を這わす。




「先輩……、大丈夫ですか。」


「……だれ?あかぁーしクン……?」


「はい、俺です。」




うずくまったまま、顔も上げずに先輩はそう言った。


いつもと同じ声なのに、随分弱々しい。



何が先輩を苦しめているのだろうか。


告白が嫌だったのか?





すると、先輩は静かに顔を上げた。




「……ふぅ、よし!もう大丈夫なのね。」


「え、」


「あかぁーしクン、ありがと〜。」


「ちょ、待っ、」




いきなり立ち上がって走っていく先輩を慌てて追いかける。


曲がり角を曲がると、先輩は壁にもたれ掛かっていた。


やっぱり、何処か悪いのだろうか。





「先輩、どうしたんですか。何か具合でも……」


「ううん、ヘーキ、ちょっとツマづいただけ。」


「でも──────」







「!」






トン、と俺の胸に置かれた先輩の手。


その手はまるで、これ以上干渉してくるなとでも言うような





『拒絶』





ガツン、と頭を殴られる様な感覚がした。





「あのね、あかぁーしクン、……ごめんね。」


「…………」





それ以上は何も言わず、先輩は歩き出した。



俺は、しばらくその場から動く事ができなかった。

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作者名:高原 | 作成日時:2018年2月17日 12時

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