02:何でスリッパなんですか? ページ2
・
ぺたぺた、
聞き覚えのある足音に、自然と目を移す。
「アッ、知らない子。」
「うす。」
俺を見るなり、ニコニコと近づいてきた先輩。
歩く度にパタパタとスリッパが鳴る。
「ねえねえ、何してんのー?」
この前の出来事で、先輩は俺の中で『不思議ちゃん』という設定になっていた。
学年に1人、いるかいないかの不思議ちゃんでも先輩はかなりずば抜けている。
が、木兎さんの扱いに慣れている俺は、自然と先輩の存在を受け入れていた。
「昼メシ買いに来ました、焼きそばパン。」
「焼きそば!好きよ、美味しいのね!」
「ですね。」
たわいもない話は、一応会話が成り立っている証拠である。
すると、先輩が歩きだそうと足を上げた時、見事にスポーン、と飛んでいったスリッパ。
「あらー」と、先輩はケンケンと跳ねながらスリッパを追いかける。
「先輩、……何でスリッパなんですか?」
ふと、思った疑問。
聞いてどうする、という事も無いけど、たんなる純粋な好奇心だ。
「知んなーい。きっと、お出かけ中なのねー。」
「……そうですね。」
能天気に、先輩は答えた。
隠されているのか、本当にお出かけ中なのか、
どちらの可能性もありえる先輩に、俺はそれ以上追求はしなかった。
「アッ、ねえねえ見て、知らない子。小さい子がいるのね。」
「小さい子……?」
窓から身体を乗り上げて先輩の指さす方向を見るが、特に何もいない。
「空に、何か飛んでるんですか?」
「……知らない子も見えないのね。つまんない。」
少し不機嫌に唇を尖らせる先輩。
彼女には何が見えているのか。不思議な人だ。
「あの先輩の名前、聞いてもいいすか。」
「んんー、先に名乗りたまえー!」
「……赤葦京治です。」
その時、風が吹いた。
先輩の髪がサラリと揺れる。
「あ、笑ってるのね。」と、先輩は空に向かって手を振っていた。
俺の名前、聞いていただろうか?
「
先輩は窓の外を見ながら笑った。
「うす。」と俺はもう1度外をよーく眺めてみたけど、やはり何もいなかった。
151人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:高原 | 作成日時:2018年2月17日 12時