89話( ^P^) ページ15
大きな音を立てて、ベッドから床に落ちる。点滴の針がずれて鈍い痛みが腕に伝わる。
「…A」
私のそばに駆けつけたのは兄さんだ。うまく身動きが取れない。兄さんの腕に包み込まれる。
無言で、及川さんが部屋から出ようとする。私は兄さんの腕を振り払って手を伸ばした。
「及川さん、違うんです…誤解して…っ」
私に振り返った及川さんの目に光はない。何度も何度も見たことがある目だ。
絶望し、軽蔑され、蔑まれる。ずっと見てきた目だ。
伸ばした手は空を切る。そのまま何も言わず、及川さんは去っていった。
ただ、脱力して震えているだけ。動く気力すらない。
左足に目をやった。動かない。そばにはうさぎりんごや皿が散っている。
「…A、さっきの人は…?」
心配した目で私の顔をのぞき込む。
「…兄さん…もう、帰って下さい」
震える体を腕で抱えた。
「ごめんなさい…今…無理です」
それ以上、もう言葉が出てこなかった。喉の奥が熱い。押し殺した感情が、また爆発しそうだった。
「…わかりました。じゃあ、また明日」
心配した表情のまま、兄さんも部屋を出ていった。
静まり返った病室に、音を聞いて駆けつけた看護師が入ってきた。
「だ、大丈夫ですか!?」
座り込んで体を抱え込んでいる私に駆け寄る。すぐさま点滴やベッドを直すと、念のため担当医を呼ぶと言って出ていった。
「…私、なんて事を言ってしまったんだろう」
呆然と窓の外を見る。担当医が入ってきた。それまでの経緯を、偽装して話した。
話終えると、医者はほっとしたように胸をなでおろした。
「よかった。君にはまだ可能性がある。下手に怪我をしてしまったら大変だからね。」
優しく私を見る医者に、ふと目をそらして尋ねる。
「あの、すみません。退院の日っていつでしたか」
「退院日かい?予定だと三週間後かな。でも外傷の治りが早いから少し早くなるかもしれない。」
三週間後…。
私はただそうですかと頷いた。
外傷は癒せても、本当の傷を癒すには三週間は短すぎ、足りなかった。
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あおインコ(プロフ) - あやの♪さん» ありがとうございます!!まさに青春です…。もちろん精一杯楽しみたいと思います!!これからもよろしくお願いしますm(*_ _)m (2017年4月8日 7時) (レス) id: 2941e47bdf (このIDを非表示/違反報告)
あやの♪(プロフ) - 高校進学おめでとうございます!青春真っ只中って感じですね(*´∀`*)高校生活楽しんでくださいね! (2017年4月8日 1時) (レス) id: ece222c786 (このIDを非表示/違反報告)
あおインコ(プロフ) - あいさん» コメントありがとうございます。待っていてくださり本当にありがとうございました。これからまた更新再開しますので、よろしくお願いしますね(*^^*) (2017年3月2日 14時) (レス) id: 2941e47bdf (このIDを非表示/違反報告)
あい - 長文でごめんなさい。 (2017年3月2日 1時) (レス) id: 65300ee319 (このIDを非表示/違反報告)
あい - なんか僕が読んでるやつに更新停止の作品が異様に多いきがしてならないのですが。しかも受験生が多い!とまあ、愚痴はこれぐらいにして早く復帰してくださいね。結構夢主と及川さんの絡みが好きなので!待ってます! (2017年3月2日 1時) (レス) id: 65300ee319 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あおインコ | 作成日時:2016年7月14日 18時