88話 ページ25
A「…あ、わり…」
でもあの時のような奇声は発さないようだ。
慣れてしまったのか、それとも熱でぼーっとしているせいなのか
国見「…ほらダメじゃん。意地張らなくていいから」
A「…む…ぅ」
文句言いたげなAを持ち上げ、家に上がりこむ。
この前来た時と変わらないけど、彼には少し違う場所のように感じた。
国見「ここで、いい?」
A「…お、う…」
ベッドに寝かされたAであったが、玄関に出た時の比ではないほどに火照っていて辛そうである。
症状が悪化してしまったのだろうか。それとも熱の最高潮に来てしまったのか。
A「はぁ…っはぁ」
息も荒くなって、一筋、汗が流れる。
意識がなければさほど辛くはないのだろうが、意識がまだあるため、そうとう辛いのだろう、もう表情を変える余裕すらない。
国見「…大丈夫?」
そう言い、自分のバックからタオルを取り出し汗を拭き取る。
A「…だい、…じょ…ぶに見えるか、よ…っ」
いつもあんな意地っ張りな彼女も、熱には敵わないようだ。
国見「…風邪薬、飲んだ?」
その問いに、首を横に降るA。
国見「とりあえず、薬とか買ってくるから、ちょっと待ってて…」
彼が立ち上がろうとしたその時
ギュ…
自分の服の袖が何かに引っかかったのかと思った。でも見てみると、それは何かに引っかかったんじゃなくて
A「…待っ、て」
Aの手が、Aが掴んでいたのだった。
突然のことに驚き、少し動揺する。
彼女は続けた、辛そうな顔で、その涙の溜まった目をうっすら開けて
小さな声で
A「…行かない…で」
一呼吸おいて、また
A「…こ、こに……っいて…」
ギュゥ
さっきよりも服を掴む力が強くなる。
と言っても弱っている彼女のこの程度の力なら、誰だって振り解ける。
でも
国見「……わかった」
彼はその手を振り払わず、ギュッと握りしめた。
少し、ただ辛そうだった表情も和らいだ、
…ように見えた。
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あおインコ(プロフ) - 嬶さん» ありがとうございます!この作品最後の更新が随分と前なので、コメントが頂けてすごく嬉しいです(^^) (2019年2月15日 21時) (レス) id: 566ade62bb (このIDを非表示/違反報告)
嬶 - おもしろいし、国見ちゃんが好きです。 (2019年2月8日 11時) (レス) id: 99593e4c9e (このIDを非表示/違反報告)
あおインコ(プロフ) - 飯を求めて三千里さん» あ、ありがとうございます…。そんな、笑わせるななんて、私には無理かも←これからもよろしくです! (2015年12月29日 9時) (レス) id: 7ba3704a0a (このIDを非表示/違反報告)
飯を求めて三千里 - 何これめっちゃおもしろいのだよ笑わせるな (2015年12月29日 8時) (レス) id: 4ecd63fe5b (このIDを非表示/違反報告)
あおインコ(プロフ) - フクネコさん» ありがとうございます!!すごい嬉しいです…。あ、涙が…いや塩が。 (2015年11月21日 20時) (レス) id: 7ba3704a0a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あおインコ | 作成日時:2015年4月20日 23時