思いがはたりあまりふたつ ページ23
セブルスが向かった先は教室ではなく寮だった。既に授業は始まっていたが、この状態のAを出席させるのはどうしても出来なかったのだ。
とりあえずAを談話室のソファに座らせてみたものの、さて、どうしたものか。あれからAは一言も喋らず俯き続けている。手に握っている杖はミシミシと音がなりそうなほどで、反対の手は掌に爪が食い込んでいる。このままでは痛いだろうとセブルスは少し遠慮がちにAの手の上に自分の手を置いた。それに驚いたのかAの肩は少し震えたがそれ以外は変わりなく俯いて手を握りしめている。
Aはセブルスに手を重ねられたとき我に返って先程の事を思い出していた。余りにも子供じみた行動だったと。あそこまでする必要はなかったとは思う、思うが、どうにも腹の奥から込み上げてくる黒い感情には抗えなかったのだ。大切な人を傷付けられそうになった。それこそ騙し討ちみたいな方法で、一歩間違えればセブルスは大怪我をしていたのだ。きっとあの時私は腹立たしいのと同時に怖かったのだ、大切な人が傷ついてしまう事が。
「A、落ち着くんだ。ここには僕とお前しかいない。」
知らず知らずの内に更に体中に力が入り震えていたのを見兼ねたセブルスが優しく囁いた。それと同時にゆっくり抱きしめ背中をさすってくれていた。張り詰めていたものが全て溶けていくようにAは心の内を吐き出した。
『ごめんなさい、ごめんなさいセブルスくん。私、やり過ぎた、あ、あんなするつもりはなくて、でも、セブルスくんを傷付けられると思ったらとまらなくて。ごめんなさい……。』
「わかっている。Aは僕の為に怒ってくれただけだ。それを責めるつもりはない。ありがとう。」
お礼を言われるようなことなんて何にもしていない。むしろお礼を言うのは私の方なのに、でも、この優しい温もりに甘えてしまいたかった。仄かに薬草の匂いがして、教授と重なった。このまま時間が止まってしまえばいいのに、そんな思いを最後に、私は夢へと落ちていった。
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minyon(プロフ) - 読ませていただきました。もっと評価されるべき作品だと思いました！凄く素敵な作品に出会えて幸せです！ (2020年8月30日 10時) (
レス) id: 542a84dab0 (このIDを非表示/違反報告)
黎亞(プロフ) - エースさん» 読んでいただきありがとうございます、楽しんでいただけたなら嬉しいです。 (2018年9月9日 21時) (レス) id: 6b044dd44f (このIDを非表示/違反報告)
エース - すごい！！こんな面白い素敵なお話を久しぶりに見ました！ (2018年9月9日 13時) (レス) id: 51893507e5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：黎亞 | 作成日時：2018年8月23日 0時
