ひかる日常 (ybhk) (ページ3)

今日:2 hit、昨日:0 hit、合計:8,510 hit

シリアスごっこページ3

俺と、薮がそういう関係になったのは
今年の頭頃のことだった。――と思う。

付き合おうなんて言葉はなく、成り行きだった。みんなで飲んだ帰り、同じ方面だった俺らはそれほど遠くないからと並んで帰っていたが、飲み足りないということになり、そのまま薮にお持ち帰りされたわけだ。大人の恋愛なんだ。身体から始まるお付き合いだって珍しくないだろ？
特に付き合いの長い俺らには今更言葉なんて照れくさいだけだし、必要ないと思ってた。というか必要ないって言い聞かせてた。

事実上はなりゆきだったが、流されただけではなくて。俺はちゃんと、ずっと薮が好きで、酔っていたとはいえ、薮となら、って思って受け入れた。男となんて初めてだったし、不安がなかったといったら嘘になるし、正直結構キツかった。

でも、やっぱ、すっげぇ嬉しかった。

それなのに。

…俺らの距離が開き出したのっていつだろう。

付き合い始めは毎日とは言わないが、頻繁に家に泊まりにきていたし、身体を重ねることだって度々あった。

それから俺も薮もドラマの仕事が決まり、薮が俺ん家を訪ねてくることが減った。そして必然的に2人きりの時間も減っていった。もちろん、仕事で一緒になることはあったけど、レギュラーの仕事に加えドラマの撮影やコンサートのリハーサル練習に追われ、プライベートで時間を作ることはなかなかできなかった。

仕事がたくさんあることは俺たちにとってはありがたいことだけど。ずっと、寂しかった。落ち着いたらふたりきりでなにしようか、ってずっと考えて頑張ってきた。

でも、実際には。お互いのドラマの収録も、ツアーも終え仕事に一段落が今も、薮が俺の家を訪ねてくることどころか、夜飯に誘ってくることでさえも、すっかりなくなってしまっていた。

まるで、あのときの二人は一時の過ちだったかのように。飽きられてしまったのか、それとも付き合ってると思っていたのは俺だけで最初から欲を満たすだけの都合の良い相手だと思われていたのか。もう他に相手が見つかった？―――

考えれば考えるほど不安だった。
でも俺がどれだけ思考を巡らせようとも答えにたどり着けるはずなんてない。

だったら、自分から誘って問いただせって？出来るものならそうしたい。でも遊びだったって言われたら俺は立ち直れそうにない。だってほら、知らぬがなんとかっていうだろ？
本人には聞けずに時間だけが過ぎていく。結局おれはただの、いくじなしだ。