第10話 ページ10
*
背中に冷たい温度が広がる。
気が付けば私は、七海さんに押し倒されていた。
有り得ないくらいに心臓が暴れ出す。
自分の顔に熱が広がっていくのが恥ずかしいくらいに分かった。
その顔を隠そうとした両手は、これまたいとも簡単に床へと押さえ付けられる。
視線を逸らしたいのに、更に近付く七海さんの顔へと向けた視線は動かすことができなかった。
ゆっくりと、唇が重なった。
それは、優しい、触れるだけのキスで。
けれど、私にとっては頭が混乱するほどに甘い口付け。
ゆっくりと離された唇に、七海さんの熱い吐息がかかる。
「ななみ、さ」
そんな彼の名前を呼び終わる前に、再び塞がれる口。
開いたままだった私の口に、七海さんの舌が入り込む。
くすぐったくて、でも気持ちが良くて、初めての感覚に頭は混乱したままだ。
「ん、っ…ぁ」
どうしてもそんな恥ずかしい声が、何度も角度を変えて重ねられる唇の隙間から零れ落ちる。
けれど、そんな風に深い口付けをしたことがなかった私は、すぐに息が続かなくなって、酸素を求めた私は七海さんの厚い胸板を控えめに押した。
それにすぐ気付いてくれた七海さんは、顔を離した。
その彼の顔は、いつもの優しい、否それどころか何故か申し訳なさそうな表情で。
「すみません、珍しく今日は酔ってしまっていたみたいで」
苦しかったでしょう、とその顔のまま彼は離れていく。
頭の悪い私は何も言えず、ただただ放心状態でそんな彼を見つめることしか出来なかった。
けれど、その顔を見て胸にズキリと痛みが走る。
待って、と言えば良かったのだろうか。
そんな短い言葉すら言えない私が不甲斐ない。
私はただただ、七海さんの大きな背中が去っていくのを、床に座り込んだまま見つめた。
暴れ回る心臓は、なかなか収まってくれなかった。
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森 - ↓なな…なんと… (2022年2月24日 23時) (レス) id: d826e852a9 (このIDを非表示/違反報告)
emi(プロフ) - 森さん» 森様、てぇてぇ頂きました!笑 お察しの通り最後のシーンはハロウィンの直前でございます…これからの二人のことはご想像にお任せ致します… (2022年2月21日 12時) (レス) id: 9ba5ed02ee (このIDを非表示/違反報告)
森 - てぇてぇな〜‼ ところで、これは2018年でしょうか?(ハロウィンもあっちゃったりしちゃいます?) (2022年2月19日 1時) (レス) @page3 id: d826e852a9 (このIDを非表示/違反報告)
たろ。(プロフ) - emiさん» ひぇ、、なんと……(震」 (2022年1月27日 18時) (レス) id: ba071d904f (このIDを非表示/違反報告)
emi(プロフ) - たろ。さん» たろ。様、コメントありがとうございます!何だかんだ五条先生は後輩思いだよなという私の解釈を盛り込ませていただきました笑 実はこのお話の後、あのハロウィンが来てしまうのです……(トラウマ) (2022年1月27日 17時) (レス) id: 9ba5ed02ee (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:emi | 作成日時:2021年3月3日 6時