第32話 ページ32
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朝食を終え、食後のコーヒーでも飲もうとしたちょうどその頃、七海さんの携帯が無機質な音を立てた。
会話の内容は聞き取れなかったけれど、あまり望ましい話題ではないことが彼の表情から見て取れた。
先程まで緩んでいた彼の表情がどんどん険しくなるのを見て、こちらまで胃が痛むような思いがしてくる。
「…すみませんAさん、折角コーヒーを淹れてくれたのに。」
「いいんですよ、謝らないでください!
帰って来たら一緒にゆっくり飲みましょう!
だから、」
七海さんの正面に立って、控えめに彼の広い背中に腕を回して。
「……気を付けて。」
彼の分厚い胸に顔を押し当てたせいでくぐもってしまったその言葉。
けれどそれはしっかり七海さんの耳に届いたらしい。
体を離されたかと思えば、大好きな手に顔を包まれて、そのまま私の唇にキスが落とされた。
それは小さな、だけど優しい口付け。
「─────…もちろんです。」
唇を離して、そう言った彼の顔には儚い笑みが浮かんでいた。
玄関先で彼を見送った時、遠ざかっていく広い背中を見つめながら、ギュッとドアノブを握り締めた。
七海さんが無事に帰って来れますようにと、その掌に祈りを込めながら。
……彼が数時間後、大きな絶望を味わうとは知らずに。
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森 - ↓なな…なんと… (2022年2月24日 23時) (レス) id: d826e852a9 (このIDを非表示/違反報告)
emi(プロフ) - 森さん» 森様、てぇてぇ頂きました!笑 お察しの通り最後のシーンはハロウィンの直前でございます…これからの二人のことはご想像にお任せ致します… (2022年2月21日 12時) (レス) id: 9ba5ed02ee (このIDを非表示/違反報告)
森 - てぇてぇな〜‼ ところで、これは2018年でしょうか?(ハロウィンもあっちゃったりしちゃいます?) (2022年2月19日 1時) (レス) @page3 id: d826e852a9 (このIDを非表示/違反報告)
たろ。(プロフ) - emiさん» ひぇ、、なんと……(震」 (2022年1月27日 18時) (レス) id: ba071d904f (このIDを非表示/違反報告)
emi(プロフ) - たろ。さん» たろ。様、コメントありがとうございます!何だかんだ五条先生は後輩思いだよなという私の解釈を盛り込ませていただきました笑 実はこのお話の後、あのハロウィンが来てしまうのです……(トラウマ) (2022年1月27日 17時) (レス) id: 9ba5ed02ee (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:emi | 作成日時:2021年3月3日 6時