第4話 ページ4
*
「七海〜シンキョ祝いしようぜシンキョ祝い〜!」
「……そんな事で呼んだんですか、五条さん」
帰ります、と先程腰掛けたばかりの椅子から重たい腰を上げようとすると、相も変わらず騒がしい五条さんが私の上着の裾をこれでもかと掴んでくる。
先程電話で呼ばれた居酒屋へと顔を出せば、既に上機嫌に出来上がっている五条さんが何本も酒の入った瓶を用意して待っていた。
いつも以上に口角の上がった五条さんに、正直嫌な予感しかしない。
「まあまあ、長年の仲なんだしさ〜腹割って話そうぜ七海ぃ」
「私は仲良くした覚えはありませんが。」
「ひどーい五条さん泣いちゃう!」
無理矢理グラスに注がれたビール。
1杯だけならと、渋々それに口を付ける。
「でも七海さあ、前の部屋結構気に入ってたって言ってたじゃん?何で急に引っ越したわけ?」
「…私だって心変わりはします。」
「ふーん」
そう言ってつまらなさそうに枝豆の殻の山を弄っていた五条さんは、突然閃いたように私の顔の前で長い指をパチンと鳴らす。
「そうか、七海にもやっっっと春が来たか…!!」
そんな五条さんの大きな声が、その場に響き渡った。
何故か確信したような言い方をする五条さんに少し苛立ちを覚えたが、隠しても何にもならないので渋々頷いてみせる。
五条さんは「え、まじ?」と少し面食らったような表情を作ったが、すぐにまた口角を上げた。
「で?いつから付き合ってんの?キスは?その先は?」
「貴方はデリカシーという言葉を知らないんですか?」
「さとるんの辞書にそんな言葉はありません〜」
飽くまでもふざけ倒す五条さんから逃げるのは不可能に近い。
諦めて正直に話すことにした。
溜息をついて、重たい口を開く。
「5年前からお付き合いしています。
ちなみに五条さんが想像しているような行為は一切しておりません、以上です。」
そこまで一息に言い切ってから、残ったビールを飲み干す。
やけに目の前に座る五条さんが静かなので、どうしたのかとチラリと見れば、絵に書いたような呆れ顔をしていた。
「七海、それまじ?」
本日二度目のその言葉が、虚しくその場に響いた。
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森 - ↓なな…なんと… (2022年2月24日 23時) (レス) id: d826e852a9 (このIDを非表示/違反報告)
emi(プロフ) - 森さん» 森様、てぇてぇ頂きました!笑 お察しの通り最後のシーンはハロウィンの直前でございます…これからの二人のことはご想像にお任せ致します… (2022年2月21日 12時) (レス) id: 9ba5ed02ee (このIDを非表示/違反報告)
森 - てぇてぇな〜‼ ところで、これは2018年でしょうか?(ハロウィンもあっちゃったりしちゃいます?) (2022年2月19日 1時) (レス) @page3 id: d826e852a9 (このIDを非表示/違反報告)
たろ。(プロフ) - emiさん» ひぇ、、なんと……(震」 (2022年1月27日 18時) (レス) id: ba071d904f (このIDを非表示/違反報告)
emi(プロフ) - たろ。さん» たろ。様、コメントありがとうございます!何だかんだ五条先生は後輩思いだよなという私の解釈を盛り込ませていただきました笑 実はこのお話の後、あのハロウィンが来てしまうのです……(トラウマ) (2022年1月27日 17時) (レス) id: 9ba5ed02ee (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:emi | 作成日時:2021年3月3日 6時