第14話 ページ14
*
「七海〜あれからどう?カノジョちゃんとは」
任務終わり、重たい足取りで高専の廊下を歩いていると、出張から帰って来たらしい五条さんがニコニコと笑みを浮かべて近づいて来た。
どうやらこの間の『酒に酔ったふりして彼女を誘おう作戦(五条さん命名)』の結果を聞きたいらしい。
楽しそうな五条さんに、心の底からため息が出た。
人の気も知らず、本当に気楽な人である。
「…………いえ、特に何も。」
「何その間、分かりやす過ぎて五条さん心配。」
で、どこまで行ったの?とデリカシーの無い質問が飛んできたので無言を決め込むが、そっかあキスまでは行ったかあ、と何故か悟られてしまった。五条さんの直感力は本当に計り知れない。
「でもさあ、七海って相当カノジョのこと好きだよね。一目惚れとかだったわけ?」
「そんな大袈裟なものでは。」
「じゃあ一気に距離が近付くアクシデントがあったとか?」
「そんなものありませんよ。」
そんな五条さんとの会話に、ふと5年前のことを思い出す。
そう、本当に何も無かったのだ。
一目惚れも、距離の近付くような出来事も、何も。
彼女は私が会社勤めをしていた時の後輩で、初めて会った時に、元気な人だな、という印象を受けた覚えがある。
無愛想で面白味のない私を、上司として慕ってくれる人だった。
特別、大きな出来事があった訳では無い。
けれど確かに、彼女への想いが芽生える出来事は多くあったと思う。
それは、コロコロと変わる彼女の表情だったり、
金に執着しない考え方だったり、
たまたま通勤中の電車内で見かけた彼女がお年寄りに笑顔で席を譲るところだったり、
出先で訪れた飲食店の店員にさえ笑顔でお礼を言うところだったり。
数え切れない小さな出来事が積み重なり、これ程の彼女への愛が生まれたのなら納得が行く。
純粋で、善人すぎる彼女を放っておけないと、守りたいと思い始めるのにそう時間はかからなかった。
だからだろうか、呪術師として働くことを決めた時も、真っ先に浮かんだのは彼女の顔で。
私がこの仕事に就くことで彼女を危険に晒すかもしれない、だがこの仕事をするからこそ彼女を守ることができるのではないか?という自問自答を繰り返した末に、彼女に想いを伝えた。
涙を流して喜んでくれた彼女が愛おしくて堪らなかったのを今でも鮮明に覚えている。
『私の傍にずっといて欲しい。』
なんてもったいぶった言い方が少しむず痒かった。
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森 - ↓なな…なんと… (2022年2月24日 23時) (レス) id: d826e852a9 (このIDを非表示/違反報告)
emi(プロフ) - 森さん» 森様、てぇてぇ頂きました!笑 お察しの通り最後のシーンはハロウィンの直前でございます…これからの二人のことはご想像にお任せ致します… (2022年2月21日 12時) (レス) id: 9ba5ed02ee (このIDを非表示/違反報告)
森 - てぇてぇな〜‼ ところで、これは2018年でしょうか?(ハロウィンもあっちゃったりしちゃいます?) (2022年2月19日 1時) (レス) @page3 id: d826e852a9 (このIDを非表示/違反報告)
たろ。(プロフ) - emiさん» ひぇ、、なんと……(震」 (2022年1月27日 18時) (レス) id: ba071d904f (このIDを非表示/違反報告)
emi(プロフ) - たろ。さん» たろ。様、コメントありがとうございます!何だかんだ五条先生は後輩思いだよなという私の解釈を盛り込ませていただきました笑 実はこのお話の後、あのハロウィンが来てしまうのです……(トラウマ) (2022年1月27日 17時) (レス) id: 9ba5ed02ee (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:emi | 作成日時:2021年3月3日 6時