第13話 ページ13
*
「すみません、お待たせしました。」
バスルームの扉が開いて、七海さんの声が聞こえた。
どうやらシャワーを浴び終えたようだ。
「はーい、今紅茶淹れてるので座ってもらっていいですよ!」
今日の朝ご飯は七海さんの好きなカスクートです!と少し自慢げに言ってみると、七海さんは凄いですね、と褒めてくれた。
淡々とした喋り方だけど、ちゃんと喜んでくれているのが分かって嬉しくなる。
真っ白なマグカップにティーバッグを淹れ、お湯を注ぐ。明るいオレンジ色がカップ一面に広がるのを待った。
だんだんとオレンジのいい香りが立ち込める。
そして、それに加えてどこからか香る、包み込むのようなシャンプーの匂い。
シャンプーの………
「ななななな七海さん?!」
「何です、Aさん。」
「ままま、まだ酔ってるんですか?!?!」
「…?酔ってなどいませんが。」
「まさかのシラフ?!七海さん、お気を確かに!!」
気が付いた時には時既に遅し。
私は七海さんに後ろから抱きすくめられていた。
完全なるデジャブである。
私の頭の上に乗っていた七海さんの顔が、す、と肩の上に乗る。今朝も見たはずの間近で見るその端正な顔に、顔が火照っていくのが嫌でも分かった。
彼の尖った鼻が、私の首や髪に触れる。
くすぐったくて、少しだけ身を捩った。
七海さんの口から零れ出た熱い吐息が、耳を擽った。
「ひゃ、っ」
腰の辺りがぞわりとする初めての感覚に、おかしな声を出してしまった。
七海さんの艶やかな短髪から一滴、雫が落ちる。
それが私の首元に落ちた時、七海さんは口を開いた。
「私と同じ香り、ですね」
思わず見つめた七海さんの顔は、シャワーを浴びたせいか少し紅潮していて。
そんな頬を緩ませて微笑む彼の、その表情は今まで見たことがないものだった。
肩から滑り落ちた私の髪から、彼と同じシャンプーの匂いがした。
結局私はまた何も出来ないまま、
ただただ七海さんのその色気に圧倒されるばかりで。
彼の頬に触れようとした右手は、そんな勇気も出ないまま、空気を引っ掻いただけだった。
*****
家具付きの新居は見つかったのですが、七海付きの部屋って無いんでしょうか((
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森 - ↓なな…なんと… (2022年2月24日 23時) (レス) id: d826e852a9 (このIDを非表示/違反報告)
emi(プロフ) - 森さん» 森様、てぇてぇ頂きました!笑 お察しの通り最後のシーンはハロウィンの直前でございます…これからの二人のことはご想像にお任せ致します… (2022年2月21日 12時) (レス) id: 9ba5ed02ee (このIDを非表示/違反報告)
森 - てぇてぇな〜‼ ところで、これは2018年でしょうか?(ハロウィンもあっちゃったりしちゃいます?) (2022年2月19日 1時) (レス) @page3 id: d826e852a9 (このIDを非表示/違反報告)
たろ。(プロフ) - emiさん» ひぇ、、なんと……(震」 (2022年1月27日 18時) (レス) id: ba071d904f (このIDを非表示/違反報告)
emi(プロフ) - たろ。さん» たろ。様、コメントありがとうございます!何だかんだ五条先生は後輩思いだよなという私の解釈を盛り込ませていただきました笑 実はこのお話の後、あのハロウィンが来てしまうのです……(トラウマ) (2022年1月27日 17時) (レス) id: 9ba5ed02ee (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:emi | 作成日時:2021年3月3日 6時