第25話 ページ25
*
「っええええ?!ナナミン彼女居たの?!初耳なんだけど!!!」
「耳元で叫ばないでください」
「ね〜!柄じゃないよねえ〜」
「殴りますよ五条さん」
Aさんの勤務先での一件から早一週間。
そんなある日、任務について五条さんと虎杖君と三人で話していた時だった。
最初は、何故か事務連絡の最中に突然始まった二人の恋バナを、新聞に目を通しながら右から左へと流していただけだった。
……のだが。
やはりここでも爆弾を仕掛けてきたのは五条さんで。
楽しそうに虎杖君と談笑していたはずのその人は、何か思いついたようにこちらにゆっくりと視線を投げかけたのだ。
そしてその口から落とされたのは、
「そういえば七海さ、あの子とは最近どんな感じ?」
────やはり特大の爆弾であった。
「へ?″あの子″って?」
案の定何も知らない虎杖君は興味津々に身を乗り出して聞いてくる。
それを見て五条さんは「待ってました」と言わんばかりに口角を上げ、黙る私を他所に楽しげにこう告げたのだ。
「七海のカノジョちゃん♡」
こうして、現在の質問攻めに至る。
「そんな怒るなって〜あれからいちゃラブしてんでしょお?妬けちゃうね〜!」
「ひゅーひゅー!」
「ひっぱたきますよ」
…実際、そんなことは無かった。
あの日以来、彼女に触れることも、ましてや目を合わせることさえできやしなかった。
彼女が私の愛を受け止めてくれたことは理解しているつもりだ。
勿論幸せなことこの上なかった。
…けれど、「触れたい」という想いは収まることを知らず、それどころかますます膨らむばかりで、それが彼女をいつか傷付けてしまわないかと恐れるようになった。
今の私のままでは、駄目なのだ。
今彼女に触れてしまえば、私は彼女をどうしてしまうか分からない。想いが止まらず、彼女を滅茶苦茶にしてしまうかもしれない。傷付けてしまうかもしれない。
何かの拍子に、張り詰めた理性の糸が裂けるかもしれない。
それがただただ恐かった。
────…つくづく情けない男だ、私は。
もう一度吐いた溜息は、持ち上げたカップの中のコーヒーを揺らした。
それは心做しか、あの日彼女が淹れてくれたものよりもどこか濁って見えた。
「…………」
目隠しの下の青い瞳が、じっとこちらを眺めているのにも気付かず、また私は息を吐いた。
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森 - ↓なな…なんと… (2022年2月24日 23時) (レス) id: d826e852a9 (このIDを非表示/違反報告)
emi(プロフ) - 森さん» 森様、てぇてぇ頂きました!笑 お察しの通り最後のシーンはハロウィンの直前でございます…これからの二人のことはご想像にお任せ致します… (2022年2月21日 12時) (レス) id: 9ba5ed02ee (このIDを非表示/違反報告)
森 - てぇてぇな〜‼ ところで、これは2018年でしょうか?(ハロウィンもあっちゃったりしちゃいます?) (2022年2月19日 1時) (レス) @page3 id: d826e852a9 (このIDを非表示/違反報告)
たろ。(プロフ) - emiさん» ひぇ、、なんと……(震」 (2022年1月27日 18時) (レス) id: ba071d904f (このIDを非表示/違反報告)
emi(プロフ) - たろ。さん» たろ。様、コメントありがとうございます!何だかんだ五条先生は後輩思いだよなという私の解釈を盛り込ませていただきました笑 実はこのお話の後、あのハロウィンが来てしまうのです……(トラウマ) (2022年1月27日 17時) (レス) id: 9ba5ed02ee (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:emi | 作成日時:2021年3月3日 6時