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「そうだ、少し遺書の内容を変えてほしい。」




ついついA殿と喋るのが楽しくて、大事なことを伝えるのを忘れていた。




思い出したようにそう言うと、彼女は紙と鉛筆を手に俺のほうを向く。






「俺の弟子である甘露寺が、昇格してな。」



「あら、そうなんですか。」



「ああ、だから『"柱"への就任おめでとう。これから辛いことも数えきれないほどあると思うが、俺はずっと君を応援している。』くらいのことを書いてほしい。」



「…かしこまりました、」





スラスラと鉛筆を走らせて美しい文字を書いていく彼女に見とれていると、



彼女はまた寂しそうな顔をしてポツリ、と溢した。






「…きっと、この甘露寺さんという方は煉獄さんの特別な人なのでしょうね。」




「…!」







その表情はひどく切ない。




彼女の声は、か細くて震えていて今にも消えそうで。




その今にも消えそうな彼女の頬に、俺は無意識に手を伸ばしていた。





サラリとその真っ白な頬を撫でれば、彼女は目を伏せる。


その目からは今にも涙が零れ落ちそうだった。







「…確かに、甘露寺は俺の弟子であり、特別な存在だ。」



「…ええ、存じております。」









「だが貴女も、俺にとっては特別な人だ。」




「っ!」




「俺は貴女が……」








…貴女が好きだ。






そんな言葉を喉の奥に追いやる。








「貴女と、出会えてよかったと思っているんだ。」







そう言うと、彼女の閉じた眼から涙が零れ落ちた。




ゆっくりと押し開けられた鳶色の瞳は涙で潤んでいて、そのあまりの美しさに息を飲む。







「嬉しい…嬉しいわ、煉獄さん」





彼女は自身の両手を、頬にある俺の手にそっと添えた。





まるで大切なものに触れるかのように優しく。





彼女は俺の手に頬を摺り寄せる。









ああ、…抱き締めたい。





ずっと触れていたい。





でも、そんなことはできない。







好きだ、たまらなく、好きだ。





貴女が愛おしい。





そんなことは、言えない。









俺はそんな幸せの中で、






二人の関係が"遺書"でつなぎ留められているという皮肉と、



鬼を狩るという恐ろしい運命を初めて呪った。

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emi(プロフ) - 柚葉さん» コメントありがとうございます!感動させられるようなお話を作るのが目標だったのでとても嬉しいです!これからも精進させていただきます! (2021年1月30日 19時) (レス) id: 9ba5ed02ee (このIDを非表示/違反報告)
柚葉 - 涙が出て止まりませんでした。 (2021年1月30日 9時) (レス) id: 33c3d87eb8 (このIDを非表示/違反報告)
emi(プロフ) - あさこさん» ありがとうございます…!あさこ様を感動させることが出来て本当に嬉しいです!きっと幸せに暮らしていますよ!コメントありがとうございます! (2020年11月8日 23時) (レス) id: 86023f8af9 (このIDを非表示/違反報告)
あさこ(プロフ) - とても美しい物語で一気に読んでしまいました!途中から涙が止まりませんでした、来世で2人が幸せになってくれることを心から祈ります(´;ω;`) (2020年11月8日 22時) (レス) id: 81f776d056 (このIDを非表示/違反報告)
emi(プロフ) - ゆきえもんさん» 読んでいただきありがとうございます!!読み直して気が付きました…記憶が曖昧なまま書いてしまってました……ご指摘本当にありがとうございます!! (2020年11月8日 6時) (レス) id: 86023f8af9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:emi | 作成日時:2020年4月23日 21時

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