二十一 修行日記 其ノ参 ページ21
暫くして、姉さんは屋敷に返ってこなくなった。
私たちは自主練を続ける。
型の会得は全て済んでいたので、一人で技術を高めることが可能だった。
「A! 急患よ、手伝ってちょうだい!」
「うん、わかった。今行くよアオイ!」
カナエさんと姉さんの分の空きは影響が大きくて、私の修行の時間が大幅に削られた。
「はい、これで大丈夫です。暫くは安静ですから、ベッドまで案内します。歩けますか?」
「ああ、ありがとう。歩けるよ」
扉を開ける。
廊下を二人で歩く。
ふと、問いかけられる。
「君は、鬼殺隊士なの?」
「まだ、鬼殺隊士ではありません。でも、もう少ししたら最終選別を受けられる予定なので、あなたは私の先輩、に当たりますかね、村田さん」
急患で入ってきた隊士は、村田という名の隊士だった。
(なんかすごい髪がさらさらさらだ。さらさらの域を超えてる)
「鬼殺隊に入って結構経つのに、任務でこんなふうに骨折ばかりしてるやつが君みたいな優秀な胡蝶様の弟子の先輩だなんて、恥ずかしくなるなぁ。頑張ってもっと強くならないと」
そういって笑う村田さん。
「頑張ってくださいね。この部屋の角、残りのひとつ、あちらがベッドになります。またアオイが薬とか食事持ってくると思うんで」
私も笑顔で返す。
「ありがとう、東條さん」
姉さんがいなくなって約一年が経つ頃、姉さんが帰ってきた。
「姉さん……おか、えり……?」
私の知っている姉さんじゃなかった。
髪は少し伸び、隊服のぼたんは金色に輝く。
貼り付けたような笑顔が特徴的で、羽織は、師範のものを使っていた。
「この度、鬼殺隊蟲柱に就任致しました、胡蝶しのぶと申します。……A、カナヲ、ただいま」
「おかえり、姉さん!」
「おかえりなさい、しのぶ姉さん」
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作者名:カナリア | 作成日時:2019年11月5日 23時