十五 ページ15
「カナ、エさん……ただいま、戻、りました……」
肩を上下させながら、屋敷の門の柱に手をかける。
大きな空は、橙色に染まる。
もうすぐ日が暮れようとしていた。
「あらあら、もう戻ったのね。よく頑張ったわ」
そういって、カナエさんは私の頭を撫でる。
その手は温かくて、始まったばかりの辛い修行に涙が出そうになる。
思いとは裏腹に、口は生意気なことをいう。
「もうちょっと遅かったら、夕飯にだって、間に合わなかったかも、しれないんですけど……」
カナエさんは笑う。
「あれは、カナヲなら、って意味よ。今のAちゃんとカナヲの違い、わかっていただけたかしら?」
「ええ、そりゃあもちろん……全身、痛すぎて死にそうで……す、よっ…………」
痛みに限界が来て、そのまま前のめりに倒れる。
「頑張ったものね、Aちゃん。夕食は食べられそうにないから、しのぶにいって、朝は消化もよくて栄養もある食事でも用意してもらおうかしら。うふふっ」
カナエさんは、気を失っている私を担ぎ、屋敷の中へ歩きだした。
目を覚ますと、明るい光が、窓からベッドに射し込んでいた。
「朝……私、どうやってここに……」
昨日あった出来事を思い出す。
(そうだった、裏山から麓まで往復五十周……カナエさんとちょっとだけ話してから倒れたんだ。それでそのまま朝に……)
ベッドの上で、ひとつ伸びをする。
「よし、しっかり寝て元気百倍! お母さんとお父さんを殺した鬼を滅殺するまで、今日も頑張るぞ!」
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お星様が黄色く染まりました。
遅くなってすみませんが、高評価をありがとうございます。
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不定期な更新、なかなかに拙い文章、ストーリーではありますが、これからもこの小説をよろしくお願いします。
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作者名:カナリア | 作成日時:2019年11月5日 23時