人生２周目はトップスター (ページ6)

今日:2 hit、昨日:3 hit、合計:42,939 hit

１ページ6

「キミ、ぜひ僕の事務所でアイドルとして活動しないか？」

混乱し思考停止状態のまま、とてつもなく見覚えのある男性から渡された名刺に視線を落とす。

どうしてこんなことになったんだっけ。

＿＿

今日は年に一度、地元で大々的に行われる祭りの日。
ダンサーとしてステージに立ってくれないかと祭りの運営委員会に誘われ、特に断る理由もなく二つ返事で引き受けた。

出番まで控え室で待機しているよう言われた僕は華やかな赤色の衣装に身を包み、自分自身へメイクという魔法をかける。

４歳の頃に頭を打って前世の記憶を思い出して以降、ずっと磨いてきたメイクの技術。
男ながらにしてメイクアーティストとして働いていた僕の最強の武器だ。

衣装に合わせた赤色のアイシャドウに金のラメを乗せ、黒のアイラインをひき最後に思い切り跳ねあげる。
深い紅色の口紅を塗り、最後にカラコンを入れたら完成。

小さく息を吐きもう一度鏡を見ると、そこには大胆不敵な笑みを浮かべた一人の少年が写っている。
今世の僕は最高の顔の持ち主だ。ふっくらとした唇にクリクリとした大きな目。色白の肌はメイク映えする最高の肌だ。
それに加え、いくらメイクしても肌はきめ細かいまま。

「うん、今日も僕のメイクが一番だね〜！」

ふふっとかわいらしく笑った瞬間、ノックの音が部屋に響き渡る。

「失礼します。Aさん、スタンバイお願いします。」

「はーい！了解です！ありがとうございます！」

呼びに来てくれたスタッフへ礼を述べた後、衣装を崩さないように細心の注意をはらいながらステージ裏へ移動する。

「この次のパフォーマンスが終わったらステージへお願いしますね。」

小声で指示を出してくれるスタッフに頷きを返す。
ステージ裏へ来たら感じるステージの前にいるたくさんの観客の気配。

身体をブルリと震わせる。
これは緊張かはたまた武者震いか。

楽しみだ、という風に息を大きく吸いニヤリと笑みを浮かべる。

「続いて、カン・Aさんです。みなさん、大きな拍手をお願いします。」

司会のアナウンスに合わせステージの中央まで進んでいく。

５歳から15歳になった現在まで続けているダンス。
メイクも衣装も最高傑作。
全員の目を自分に釘付けにするんだ。

「みなさーん！こんにちは！僕はカン・Aと申します！
今回はこんな素敵なお祭りのステージへ立つことが出来て本当に光栄です！」

大きく深呼吸しながら深くお辞儀をする。