懐<カイ>

7-夏の予定- ページ7

翌日も雨で、その次も。

章大くんが差している傘は彼のものだし、

章大くんは変わらずに「おはよー」の挨拶はしてくるけれどそれだけで、

それ以外にはなにもなく

時間も月日も過ぎて行く。

だから傘も返って来ていないけれど、

まぁ大事な傘でもないし、

前に出かけた時、

突然雨が降ってとりあえずで買ったものだからと諦めた。

その前に、

私が貸したという認識もないかもしれないのだから、

モノを貸したからといってなにかあるなんて期待するのが間違えているんだと自分自身を納得させて、

鞄から小説を出して読みはじめる。

最近のお気に入りは刑事もの。

なかなかグロイシーンもあるけれど、

それでもシリーズになっているから読みはじめていた。

数冊続いているこの小説を読み終わるころには、

雨の季節は終わっていて、

太陽はキラキラして暑い日が続いていた。

制服も夏服に切り替わって、

夏休みも目前で、

クラスメイトはなんとなくそわそわしているのは、

夏休みに出かける話で盛り上がっているから。


安「潜りに行くんやで？」


そんな言葉が耳に飛んできたから、

本を読むふりをして聞き耳を立てる。


安「おん、海に。

めっちゃ気持ちええよ？」


…ダイビングか…。

夏の海。

ましてダイビングなんて縁遠い話すぎて想像もつかないし、

そういうところには

私の知らないキラキラが溢れているのだろうなと感じてしまう。

そして、教室ではない夏の浜辺。

章大くんはそこに負けないくらいキラキラしている姿が浮かぶ。

見てみたいという反面、

やはりそこに自分が居るという絵が浮かばずに、

自分は日陰なのだと痛感してしまう。


なにも変わらない、

変われないのは自分のせい。

そんなことはわかっているけれど、

なにをどうしたら…。

どこからどう変えたらいいのかがわからないのだから、

私は私のまま過ごすことになる。

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