48-回想-(章大Side) ページ48
目の前でAがフリーズしとる。
グラスの中の氷が1度、カランと高い音を立てた時にハッとして
『え?』
と聞き返してるから、今度はちゃんと
安「付き合っとるやつとか居らんのやったら、俺と付き合お?
あ、もし、ええ人が居るって言われても、俺の気持ちは変わらへんから諦めへんし…
それに、そうやったとしても…奪うんやけど」
わかりやすく言ったつもり。
持っていたグラスを落としてまうんやないかと思ったから、身を乗り出して手を伸ばす。
Aの手の中にあったグラスは今は俺の手の中で、すぐにテーブルのコースターに乗った。
「なぁ…俺やとあかん?
俺の気持ちはあの時のままなんやけど」
『…あの時って…』
「俺は忘れてへんのやけど、Aは忘れてもうた?」
言葉で気持ちを伝えたわけやないし、歌っただけや。
翌日にはもう会われへんくなるのをわかとったから気持ちを伝えられへんかったあの日。
まだ子どもやった俺にはあれ以上何もできひんって思ったから、あれをするのが精一杯やったけど、
今やったら…
しまった気持ちを出してもええよね。
てか。
そうせんと、この後ずっと後悔しか残らへん予感しかないねん。
「Aは知らんかもしれへんけど…
初めて会ったのは入学式やないんやで?」
『…え?どういう…』
真っすぐ俺を見る目がなんだか眩しく見えて、思わず視線を逸らしそうになったんやけど、それでもそのまま話し続けるのは、気持ちの全部を知って欲しかったから。
こうやって、また会えたことを無駄にしたくなかったんやもん。
.
あの日。
高校に入学する数日前。
ふらっと立ち寄った楽器屋で目を引いたのは派手さはあれへんのやけど、俺と同じくらいの年の女の子。
たまに居る試し弾きでガチで弾いとるヤツらとは違って、ほんまに試しながら弾いとる感じが印象的で、俺に…人が居ることも気にならへんような姿に引き込まれた。
静かに邪魔せんように近寄ってみて気が付いたこと。
…なんか歌っとる?
鼻歌程度やけど、そして歌詞はないのかメロディのみのその歌。
聴いたことのないメロディ。
ということは作った曲ってことなんかな?
そんな疑問を抱きながら、ギターの譜面と弦を見に来たはずやのに、初めて見る彼女の歌声が聴きたくて、全く関係のないピアノ譜を手に取って見ているふりをしていた。
きっとな。
この時、俺は、名前も知らない彼女に恋してん。
あ、そういう気持ちやって気付くのはもう少し後やけど。
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華絢(プロフ) - 蒼乃碧さん» どうなりますかねぇ(ノω`*)んふふ♪ もう、なるように…的な(´・ω・`) (2018年4月1日 21時) (レス) id: 479a0f7ed2 (このIDを非表示/違反報告)
蒼乃碧(プロフ) - くはぁ、せつない…(´;ω;`)これからどうなるのかな…。 (2018年4月1日 6時) (レス) id: b2e7866667 (このIDを非表示/違反報告)
華絢(プロフ) - ひみささん» ひみささん、いつもありがとうございます(〃ω〃) 珍しく学生設定にしてみましたー♪ お付き合い頂けたら嬉しいです(〃ω〃) (2018年3月22日 21時) (レス) id: 479a0f7ed2 (このIDを非表示/違反報告)
ひみさ(プロフ) - 新作公開ありがとうございます(*^^*) 高校生なんですね〜、黄色もあるんですね〜、色々楽しみです♪ (2018年3月22日 14時) (レス) id: 6eb2ce4a4e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:華絢 | 作成日時:2018年3月22日 13時