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13-傘- ページ13

振り返りたいけど、振り返れない。

この足音は誰のもの?


錦「A…?」


『…亮くん』


錦「今帰るん?」


『うん』


そんなに都合よく章大くんがくるはずはないか。


錦「傘、朝に壊してもうて。

せやから入れてくれへん?」


私の手の中の傘を取られて、自分のもののように傘が開く。

雨足が強くなる中、

今日は朝から雨だから持っていない折り畳み傘。

この状況は完全に相合傘となってしまうのに、

そんなことを気にする方が恥ずかしいと言わんばかりに、亮くんが


錦「早よ」


なんて言うから、

顔を上げずに横に並んだ。


錦「そんなに離れたら、びしょびしょになるやろ?」


左に並んだ私の腕を取って、

ぐいっと亮くんの方に引っ張られる。

私の右腕と亮くんの左腕がぴったりとくっついてしまって、

それなのに満足そうにニヤっとするから、

私はただ俯いて歩くしかなかった。

私の歩幅に合わせて歩いてくれるとか、

どうしていいのかわからない感情が湧く。

動かない片想いよりも、きっかけ一つで揺れる感情。

章大くんへの気持ちがぐらっと亮くんに傾いた瞬間。

なにも会話はなくて、

傘に落ちる雨の音とふたりの足音だけが響く。

どこまでこうやって亮くんと歩くのだろうかと思っていると、

見慣れたところを歩いていることに気が付く。


錦「…ここからは、どこ?」


家にほど近い場所。


『…こっち…』


確かに前に聞かれた家の場所。

近くの目印になりそうなところを教えたけれど、

それを覚えていたってこと?


錦「ん」


なんとなくの道案内。

傘があっても1つの傘じゃ濡れそうなのに、

私は全然濡れていない。


『ここ』


錦「ん。じゃ」


屋根になっていて濡れない位置まで私を押し込んでからも

亮くんは傘を離さないし、

ひとりになった傘は亮くんをすっぽり包んでいて、

そして気が付いた。


『亮くん…ごめん、濡れちゃってる…』


私が濡れていないのは、

亮くんが傘からはみ出ていたから。

シャツが透き通るように張り付いて、

その肩から腕のラインを強調している。

慌ててハンカチを取り出したけれど、

これじゃ拭ききれないのもわかってるけど。


錦「ありがと」


その言葉でキュンとした。

14-傘の花-→←12-君ならいいのに-



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華絢(プロフ) - 蒼乃碧さん» どうなりますかねぇ(ノω`*)んふふ♪ もう、なるように…的な(´・ω・`) (2018年4月1日 21時) (レス) id: 479a0f7ed2 (このIDを非表示/違反報告)
蒼乃碧(プロフ) - くはぁ、せつない…(´;ω;`)これからどうなるのかな…。 (2018年4月1日 6時) (レス) id: b2e7866667 (このIDを非表示/違反報告)
華絢(プロフ) - ひみささん» ひみささん、いつもありがとうございます(〃ω〃) 珍しく学生設定にしてみましたー♪ お付き合い頂けたら嬉しいです(〃ω〃) (2018年3月22日 21時) (レス) id: 479a0f7ed2 (このIDを非表示/違反報告)
ひみさ(プロフ) - 新作公開ありがとうございます(*^^*) 高校生なんですね〜、黄色もあるんですね〜、色々楽しみです♪ (2018年3月22日 14時) (レス) id: 6eb2ce4a4e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:華絢 | 作成日時:2018年3月22日 13時

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