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68-一生…-(Side A) ページ19

はじめて使うその鍵を差し込んで、

ガチャリと施錠を外した。

驚いて振り返ったその顔と目が合った。


『…忠義…どこに行ってたの?』


大「…」


『それに、あの紙はなに?』


大「…」


『…何か言ってよ?』


すがるように、

正面に立って二の腕を掴んで質問を投げかける。

俯いて合わない視線。

それでも、


『忠義…!』


少しだけその体を揺する。


『お願い…なにか言って…?』


もうそれしか言えない。


大「…A…」


『なに?』


大「…なんで泣いとるの?」


私の頬にかかる手。

ゆっくりと撫でるから、

自分が泣いていたことに気が付かされる。


大「あんな…」


『うん?』


大「…自首してきた…」


『…』


言いながら、壁際のソファ席に座らされる。

その横に忠義が座って、私の方に向き直る。


大「朝に、自首してきた。せやけど…」


視線が床に一回落ちてから、

私をしっかり見据えたその瞳。


大「被害届が出てへんから…帰された」


『…え?』


大「被害者に確認するからってことやったけど…。

あの騒ぎがあったことは知っとる風やったんやけど、

どうやら足を踏み外しただけやってことになっとるとかって…」


『…』


忠義が私のそばから離れなくて済むんだとどこかでほっとしつつも、

どうしてそういうことになっているのだろうか。

…信五さんの考えていることがわからない。

こうやって、

信五さんは私を縛り付けようとしているということなの?

恩を着せて、いつか何かを要求してくるの?

誰か、教えて?

だけれど…。

これで、忠義が私から離れることはもうなくなった。

罪はふたりでかぶればいい。

考えてもよくわからないことが多すぎて、

だんだんともうすべてがどうでも良くなって、

徐に立ち上がって店内を移動する。

カウンターの中のアルコールランプに火をつけて、

朝に置かれていた離婚届に火をつけた。


もう私は忠義以外はいらないの。

信五さんにされていたことは、

全部忠義にシテもらうから。

多分ね、忠義も好きだと思うんだ。

そういうプレイ。

だからもう…

私は一生忠義のモノだし、

忠義は一生、

…死ぬまでわたしのモノ。

69-天罰-(Side信五)→←67-変われる?-(Side A)



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華絢(プロフ) - めちゃさん» めちゃさん、コメントありがとうございます(〃ω〃) もしかしたら…で当たりましたか?(ノω`*)んふふ♪ すばるくんは怪しい存在なので、まだ大丈夫であればお付き合いください(〃ω〃) (2018年3月12日 14時) (レス) id: 479a0f7ed2 (このIDを非表示/違反報告)
めちゃ(プロフ) - ラストはちょっともしかしたらなんて思ってもみたしたが、文字で読むとゾクッしました。またあのすばるくんの感じが怪しいすぎて良かったです。また次作も楽しみにしてます。 (2018年3月12日 14時) (レス) id: c69cfecf41 (このIDを非表示/違反報告)
華絢(プロフ) - sangozygoさん» ありがとうございます(〃ω〃) どハマり!とっても嬉しいお言葉♪ あっちでもこっちでも、私、両手広げてお待ちしてます(〃ω〃) (2018年3月12日 8時) (レス) id: 479a0f7ed2 (このIDを非表示/違反報告)
華絢(プロフ) - ひみささん» ありがとうございます(〃ω〃) 続編ですかね♪ご期待に添えられるかは分からないのですが楽しんで頂けたら嬉しいです(ΦωΦ)! (2018年3月12日 8時) (レス) id: 479a0f7ed2 (このIDを非表示/違反報告)
sangozygo(プロフ) - 完結お疲れ様でした。いやー、こういうテイストがどハマりしたと思ってます。またあちらで絡みに行かせてくださいませ! (2018年3月12日 7時) (レス) id: 2d16d0288e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:華絢 | 作成日時:2018年3月5日 6時

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