検索窓
今日:10 hit、昨日:27 hit、合計:555,249 hit

風邪はひき始めが肝心。 ページ37

貴方side

カラスが空高く飛び、カァカァと声をあげる。

『あ』

ふと、シェアハウスのみなさんに聞きたかったことを思い出した。
ずっと前から気になっていたことだ。

『皆さんって、どんな仕事してるんですか』

長い間一緒に過ごしているのだが、皆さんが仕事をしに外へ出かけて行く様子を見たことがない。

「あー」

るぅとさんは、少し戸惑ったような声を出す。
そして少し考える素振りを見せる。

「まぁ、簡単に言うと人を笑顔にする仕事ですかね」

夕日の光に劣るとも勝らない微笑みにボボボッと頰が熱くなる。

『すごいですね、そういうの』

素の言葉だった。
決してさっきの恥ずかしさを紛らわす為ではない。

「そうですか?」

彼は首をかしげる。

『そうですよ』

まだ頰の温もりは空気中へは放たれない。

「Aさんも十分すごいですよ」

『そうですか』

相変わらず素っ気ない会話だが、私にはこれが精一杯である。
もともと一人を好んでいたから。

「僕、会話って知らない人は当たり前ですけど、知り合ってから三ヶ月だった人でも緊張しますもん」

「おかしいでしょう」と言う彼を否定するように横に首を振る。
私も、未だに緊張する人だっている。

「だから会社なんてハードルが高いです」

意外だった。
るぅとさんは料理はともかく、洗濯や掃除はとても綺麗にしてくれる家庭的な人。

『そうですかね』

そして、優しく仲間想いな性格。
こんな人柄の持ち主がそんなことを思っていたなんて、嘘みたいだ。

「そうですよ」

影がだんだん濃くなってくる。

『そうですね』

口角が上がる。

「そうなんですよ」

つられて彼も。

『あっ、ははっ』

「ふふっ、あははっ」

二人して、大きな声で笑い出す。
なぜかは分からない。
だけど不思議と、笑いが込み上げてきたのだ。

「ふっ、、、」

『ふっ、ふふ』

るぅとさんが笑いを必死に堪えるもんだから、それがおかしくておかしくて。

『なっ、涙がっ』

「笑いすぎたぁ」

太陽が西の空へと沈んでいく。
それは、1日の終わりを称するもの。

『お腹痛いっ』

「僕もです」

反対に、明日の始まりがあることを称するもの。
ビニール袋を三つ抱える影が二つ。
それぞれ、片手に一つ。
そして真ん中(二人の間)に。

治り掛けも気をつけな。→←夢を追う者騒がしく。



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (697 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1391人がお気に入り
設定タグ:すとぷり , 歌い手 , 双子
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

雨んぼ(プロフ) - 泣いちゃいました(笑)なんか、少し私と重なって、より一層泣きましたwwすっごく良かったです!これからも頑張ってください! (2022年5月11日 22時) (レス) @page48 id: 5fc4c4d6bd (このIDを非表示/違反報告)
葵音 - 泣いてしまいまいた。すご良くて、びっくりしてしまいました! (2022年1月26日 17時) (レス) @page43 id: c9207ab068 (このIDを非表示/違反報告)
元気に生きていたい! - はい!泣きましたァァ!!すごく良かったです!!!!! (2021年8月21日 18時) (レス) id: 0301fd6d5d (このIDを非表示/違反報告)
アネモナ - 涙がでできました!私はマスク外したくないから外せって言われるの大嫌いですね (2020年5月24日 0時) (レス) id: 8d7833d063 (このIDを非表示/違反報告)
miko - なんか、本屋に売ってあるようなクオリティーでとても好きな作品です!凄く面白かったです! (2020年5月12日 0時) (レス) id: 6feb6d5170 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:あはぴー x他2人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=2bf929b5ed877904e3eb7e3aafbf136b...  
作成日時:2019年4月4日 15時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。