私達は双子で私は苦労人。【すとぷり】

スポットライト独り占め。 ページ16

貴方side

ｷｰｺｯ ｷｰｺｯ

ブランコを漕ぐ。
幼稚園の頃はブランコで一回転するのが一時期の夢だった。
どんどん勢いがついていって、手を離せば振り落とされてしまう。

『流石に無理だな…』

漕ぐのをやめて、勢いを落とす。
雨に濡れたマスクはとってカバンに突っ込んだ。

雨に滴るいい女になれたらな。

そんな願いを込めて。

ブランコの下にできた、浅い水溜まりに足を着き、ブレーキをかける。
じわっと、水がヒールから染み込んできて。

ぽたり ぽたり

雨が激しくなって目の前が滲む。
目を擦っても、雨は止まない。
雨はとっくの昔にやんでいて、月明かりが見えているというのに、私のところだけ、晴れてはくれない。
学生の頃は

早く大人になりたい。

大人になって楽になりたい。

そうやって考えていた。
でも、違った。
大人になっても何も変わらなかった。

ただ、歳をとっただけ。

ただ、大きくなっただけ。

ただ、辛くなっただけ。

『忘れよう、もう』

忘れられないでしょ？

『覚えててもいいことないよ』

本当にそうかな？

『過去は振り返らないでおこう』

落し物は拾わないの？

『前だけ見て、笑おう』

月明かりに照らさせて、精一杯の笑顔を作る。

ﾊﾞﾁﾝｯ

そんな音を立てて勢いよく頬を叩く。

『泣くな、大丈夫、雨に負けんな！』

活気づいた私を月は照らしてくれる。
それはまるで一人、ステージにスポットライトを浴びている気分だった。

「A！」

はぁはぁ、と荒い息遣いが後ろから聞こえる。
ゆっくりと後ろを振り向く。
言いたいこと言ったから今はなんでも許せるような気がする。
たとえ

「そんなに濡れてまた風邪ひくじゃん」

優しい笑顔を浮かべたあんた(雫)でも。

『探しに来たの？傘もささずに』

口をゆっくりと開く。

「そりゃもちろん。
だって、Aが傘ないのに私がさすわけないじゃん」

『先に帰ってればよかったのに』

「たった一人の姉を置いてく？普通」

『置いてかないの？』

「私は置いてかないの」

優しい君と無愛想な私。
似ているようで似ていない双子。

『この前、ごめん』

「なんのこと？」

『なんでもない』

とぼける君と誤魔化す私。
正反対の双子。

「A、マスク外してるね。
そのままにしたら？」

『いやだね。
新品のマスクあるからそれつける』

「けちっ！」

怒る君と笑う私。
でもやっぱり似ている双子。
今日はいつもより、少しだけ、素直になれたかもしれない。

ゆっくりのんびり答えを待つよ。→←スーパーウルトラ超ダサい成人女性が一人。

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