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番外編 ページ8







『狐』に誑かされたなら。





包帯の場合。



「やぁ、ご機嫌如何かなお嬢さん。私と心中しない?」
「…………」
尻尾が9本、青地の着物から見える隙間は包帯。
人間、どこからどう見ても。なのにその尻尾のせいで人間という概念を壊してきているのだ。
「あぁ、まるで」
青年はなにか…例えるならそうだ、新しい玩具を見つけた様な声で大きな独り言を呟く。
数秒、黄昏れるように目を閉じた後、また口を開いた。
「お嬢さん、君はどうしてこんな山奥に居るんだい?友達は?」
「…いない、だれも」
純粋な疑問だったのだろう、少女の年齢からすると村の方には同じ年齢の子どもだって居るだろうに。そんな思いしかなかったのだ、でもそれが。
少女が暗い顔にさせた原因だと気付いたのは云った後。
「しんじゅう、だっけ?いいよ、私にはもう何も無いから」
まるで独り言のようだった。
でもそれを独り言と捉えるにはあまりにも無邪気すぎた。
それから思考を巡らせること数秒、青年はある考えに辿り着いたのだった。


「ねェ、私と一緒に来ないかい?」





木の上に座ってボーッと何時もの様に緑を見つめていると下からがさり、と何か音がした。
目を下に向けるとそこにはエリスちゃんと同い年…ぐらいの少女。
蜂蜜色の髪にツヤはなくて身体も所々に血の滲んだ包帯が巻かれていた。
……佳い暇潰しにはなりそうだね。
「やぁ、ご機嫌如何かなお嬢さん。私と心中しない?」
よく見れば人形のような顔立ちの少女は何も写っていない濁った虚ろな目で此方を凝視した。
「あぁ、まるで」
私を拾った町医者が好みそうな女の子だ。一見ニコニコと微笑ましい笑顔なのにそれは表の顔。表情は一転して笑っていないのだもの。
「お嬢さん、君はどうしてこんな山奥に居るんだい?友達は?」
「…いない、だれも」
舌っ足らずに呟かれたその言葉は泡になって消えそうだった。
可哀想な子、可哀想な子。いよいよ憐れみの目を隠すことなく君へと向けた。
「しんじゅう、だっけ?いいよ、私にはもう何も無いから」
その瞬間に風が吹いて無造作に切られた髪の毛が揺らめく。太陽の光を独り占めしてるみたいにキラキラ光っていたその姿は私からすれば眩しい。
あまりにも…触れてはいけない、見てはいけないような気がして。
気が付けば私はこんな言葉を口から発していたのだ。


「ねェ、私と一緒に来ないかい?」



私なりの歓迎(誘い)の言葉。

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たびのひと - はじめまして!とても面白いです!一日で全部読んじゃいました!更新待ってます! (2020年5月18日 23時) (レス) id: 06a128996a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:カノ | 作成日時:2020年1月12日 2時

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