桃井さつきに成り代わったから、とことん現実を呪ってやろうと思った。

悪いのは誰 ページ44

「この通り、周りよりもルックスがよくて、女子からチヤホヤされてて。それが気に入らなかった他の男子の嫉妬がきっかけで、いじめられるようになったんス」








そうか。黄瀬も、いいことばかりではなかったのか。









「始めは無視とかそこら辺だったけど、どんどんエスカレートしていって……終いには、こんな痣までつけられちゃったんスよね」









黄瀬は、お腹の辺りにもある黒い痣を指差した。









「オレ、ホントに何が悪かったんだろう、っていっつも思ってて。ホントに、何が悪かったんスかね。もう今じゃ、見つけることのできない答えなんスよ」


「悪くないよ……」


「え？」


「黄瀬君は、なんにも悪くないよ！」









言うとすれば、本当に悪かったのはこのオレだ。
原作ではこんなこと語られていなかったし、恐らくオレが来たせいで何かが歪んだのだろう。
結果黄瀬が傷付いた。









「全部、周りが悪いんだよ。勝手に嫉妬して、勝手に苛立った、周りが」


「そう、なんだろうけど、やっぱりダメなんスよ、オレも。当初は何度も『止めて』って叫んでたけど、止まらなくて途中で抵抗を放棄しちゃったし。それに……やっぱり、女の子の前では、笑顔でいたかったんスよ。オレを大好きだって言ってくれるから、心配させちゃダメだって」


「でもその子達は、そんな無理してる黄瀬君に気づかなかったんだよね。なら、『大好き』じゃないんじゃないの。本当に『大好きだ』って言うなら、好きな人のいつもとは違う些細な行動はすぐに気づくはずだよ」


「……」


「黄瀬君。そのいじめっ子達だけが悪いんじゃないんだよ。結局、皆悪いんだよ。自分の言動に責任を持てなかった彼女達も悪いんだよ」

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