「この人は良い人」 ページ9
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「…まぁ、こんな海の上で1人、子供が居るんだ。海軍本部に連れて行かない訳にはいかない」
『行ってどうする』
私は無愛想に聞く。
「行ってどうするって言われても、…とりあえず、元帥の所に向かうよ」
ほらほら、と言い男は私の小さな船と自転車を繋げて、男は自転車にまたがり、私は小舟に乗って海軍本部へと向かった。
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『広い…』
海軍本部に着いた私達は元帥室へと向かっている。
海軍本部は予想以上にでかく、広かった。
「俺もたまに、迷っちまう広さだからな」
『お前が迷ったらだめだろ』
「まぁな、てか、俺をお前って呼ぶのはやめろ。俺にもちゃんと名前がある」
『じゃあ、名前は？』
「クザン。…嬢ちゃんは？」
『…A』
「そうか、Aか…よろしくな」
『うん』
と軽い自己紹介をしている間に元帥と書かれた大きな扉の前に私達は立っていた。
男…いや、クザンは扉にコンコンとノックをし、躊躇無く、扉を開けた。
「おい！私が許可するまで入るな！」
と元帥は無許可で入った事に対して怒っている。
「あー、すいません」
とそれに対して反省の色を見せないクザン。
「まったく…クザン！お前、仕事を放ったらかしてどこに行っていた？！」
「散歩」
と何も躊躇いも無く平然と答えるクザン。
「馬鹿者！海兵たるものが！」
元帥はカンカンに怒っている。いや、怒っているを通り越し、呆れている。
「それよりセンゴクさん」
「何だ」
クザンの呼びかけに返事をする元帥。
「…この子」
と言いクザンは私の背中を優しく押し、元帥の元へと前に出した。
『……』
「…そこのお前、名前は？」
『…A』
優しく問う元帥に対して私はぶっきらぼうに返す。
「そうか…A…親はどうしたのだ？」
『もう居ない…』
「殺されたのか？何処かへ行ったのか？」
またしても優しく問う元帥、わたしはフルフルと首を横に降る。
「では、何があったんだ？」
『…』
その台詞で私は無言になった。別に、何か言えない事情があった訳でも無い。
ただ、何かこの人に言うともやもやするような気がする。
「…言えないのなら良いが、出来れば言ってくれるとありがたいのだが…」
元帥は苦笑いをするも、元帥の目は真剣だ。
何故か、この表情で私のもやもやとする感覚は消え、この人は……良い人だ…
______そう、誰かが言っている気がした。
『親は……
私が殺した』
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