大沢透・アーヤSide ページ34
私は、黒木クンについて足早に歩いた。
はじめに行ったのは、駅だった。
(P159)
自動切符売り場のはしに立っていたひとりの男の子に近づいて、黒木クンは声をかけた。
「君が、大沢?」
うなずいたその子は、中くらいの背で、首が太く、ガッシリとした体つきをしていた。
四角い顔の中で、おどおどとした目が不安そうに光っている。
「黒木だ。来てくれてありがとう。」
スマートに言って黒木クンは、右手を差しだし、大沢透と握手をした。
それだけで、大沢透は、少し落ち着いたようだった。
「聞きたいことって、なに?」
黒木クンは、なんでもないといったように軽く笑ってみせた。
「たいしたことじゃないんだけどさ。」
そう言いながら、大沢透の肩に親しげに腕をかける。
なごやかな雰囲気が生まれ、大沢透は、また少し緊張をゆるめた。
「先月試合したKZの若武のこと、覚えてるだろ。
あいつが、おまえを気にしてるんだ。
キャプテンやめたって聞いてさ、ずっと心配してる。
おまえの実力を認めてたから、よけいにだ。で、おまえから若武に、ひと言メッセージをもらえないかと思ってさ。」
(P160)
言いながら黒木クンは、その目を油断なく光らせて、じっと大沢透を見つめた。
「どんなことでもいい。若武にひと言、言ってやってくれないか。」
大沢透は、大きな息をついて、うつむいた。
「別に……なんてことないよ。キャプテンやめても、ちゃんと練習やってるし、オレ、サッカー好きだから。」
その様子は、飾り気がなく、自然で、そして少し不器用そうだった。
「若武は……そうだな。天才肌のヤツだから、もっとのびるだろう。ただし、自分でテングになっちまったらダメだけどさ。」
私は、ついついうなずいてしまった。
だって若武って、すごくテングになりそうなタイプなんだもの。
「オレのことなら、気にしなくていいって言っといてよ。それより自分のことに気を使えって。ジュクといっしょじゃ、たいへんだろうし。」
言いながら大沢透は顔を上げ、わずかに笑った。
「若武のプレイを初めてそばで見たとき、ショックだったよ。ああ、こういうヤツがいるんじゃ、ちょっと勝てないなって思った。でも、同時にすごくくやしくて、オレももっと強くなりたいって思った。それからずっと思ってる。もう少し実力がついたら、また試合したい。」
(P161−162)
黒木クンはうなずいて、ポンポンと大沢透の肩をたたいた。
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真穂(前よりさらに低in)(プロフ) - 恵菜さん» ありがと〜!!今夜も更新しまーす! (2016年8月23日 19時) (レス) id: d9b3432565 (このIDを非表示/違反報告)
恵菜 - ↓ごめんなさい!間違えました。恵菜です。 (2016年8月23日 19時) (レス) id: 06036da36b (このIDを非表示/違反報告)
Mio - おめでとうございます!応援してます! (2016年8月23日 19時) (レス) id: 06036da36b (このIDを非表示/違反報告)
真穂(前よりさらに低in)(プロフ) - 恵菜さん» ありがとう!! (2016年8月14日 23時) (レス) id: d9b3432565 (このIDを非表示/違反報告)
恵菜 - よかったですね!更新頑張ってください! (2016年8月14日 23時) (レス) id: 06036da36b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まーお。 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/9649c0265d1/
作成日時:2016年5月3日 12時