お兄ちゃんの言葉・アーヤSide ページ25
お兄ちゃんって、背は高いし、成績もいいし、すごく大人に見えるけれど、本当は若武とあんまり変わってないのかもしれない。
そう思うと、私は複雑な気分だった。
(P141)
お兄ちゃんが、今までになく身近に感じられて、うれしくもあり、また急に頼りなく思えて、少しがっかりもした。
「とにかく。」
お兄ちゃんは、重々しさを取りもどそうとして、ピンと背すじをのばしながら言った。
「盗難防止用のチェーンを引きちぎれる人間なんか、いやしない。とくに、逃走中の強盗にそんなゆとりはない。オレが強盗なら、チェーンのついてないヤツを探す。そのほうが早い。秀明の西口なら、パチンコ屋の裏手だろ。少し歩けば駐輪場じゃないか。よりどりみどりだ。」
あ、そうか。
私は、夢から覚めたような気持ちでうなずいた。
「そういえば、そうよね。」
そのときになって、ようやくママの話を思いだした。
強盗は、たしか白い車で逃走したんだったわ。
車があれば、自転車なんて、いらない。
私は、ほっとため息をついた。
若武の話は、いつも本当みたいに聞こえる。
(P142)
若武は、自分の空想を人に信じさせることができるんだ。
そして相手を、いつの間にか自分の考えに染めてしまう。
やっぱり魔法使いかもしれない。
そう思う私の前で、お兄ちゃんは、フンと鼻をならして、私をにらんだ。
「想像だけで、いいかげんなことをしゃべんじゃないぞ。おまえの信用がなくなるからな。おおかみが出たって騒ぎまくったウソつきのガキの話を知ってるだろ。本物が出たときには、誰も助けてくれなくなる。」
目つきは、相変わらずきつかったけれど、言い方は、さっきより少しやさしかった。
「うん、わかった。教えてくれてありがとう。」
そう言うと、お兄ちゃんは、まるで悪いことでもしてしまったかのように、あわてて顔をそむけ、コソコソと自分の部屋に上がって行った。
山のように大きいその後ろ姿を見送りながら私は、今聞いたことのすべてを、わたしたちの緊急会議で報告しなければならないと思った。
若武が、また私たちを魔法にかけないうちに。
そして正しく調査して、きっと自転車を取りもどすんだ。
(P143)
それにしても、私は不思議だった。
いったい誰が、あのチェーンを引きちぎったというのだろう。
素手では切ることができないはずの強いチェーンを、いったい、どうやって!?
(P144)
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真穂(前よりさらに低in)(プロフ) - 恵菜さん» ありがと〜!!今夜も更新しまーす! (2016年8月23日 19時) (レス) id: d9b3432565 (このIDを非表示/違反報告)
恵菜 - ↓ごめんなさい!間違えました。恵菜です。 (2016年8月23日 19時) (レス) id: 06036da36b (このIDを非表示/違反報告)
Mio - おめでとうございます!応援してます! (2016年8月23日 19時) (レス) id: 06036da36b (このIDを非表示/違反報告)
真穂(前よりさらに低in)(プロフ) - 恵菜さん» ありがとう!! (2016年8月14日 23時) (レス) id: d9b3432565 (このIDを非表示/違反報告)
恵菜 - よかったですね!更新頑張ってください! (2016年8月14日 23時) (レス) id: 06036da36b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まーお。 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/9649c0265d1/
作成日時:2016年5月3日 12時