家族よ ページ10
「…ッ！！」
甲板でティベイと雑談をしていたイゾウは突然目を見開くと、勢いよく振り返って船内へのドアを見た。
「どうした？」
ティベイが声をかけるもイゾウは奥歯をギリギリと噛み締めて顔を歪めるだけだった。
「何してくれてんだ…！！！」
全力で船内へ走っていったイゾウの背中を見つめてティベイは顔を青くしながら呟いたのだった。
「ごめんマルコ」
楽しく話しつつ部屋に入ろうと一歩踏み出したマルコは、廊下の向こうから歩いてくる殺気ともとれる気配に命の危険を感じてAを背中に隠した。
「なんだテメェかよい…」
マルコはホッと胸を撫で下ろしたが、イゾウは早足でマルコの前に立つと肩を掴んでAと引き離した。
「なんでここにいる」
「ティベイからAが病気だって聞いてねい。医者として、家族として確認しない訳にはいかないだろうよい」
『えっティベイ？！』
イゾウはチラリとAを見るとため息をついて言った。
「見ての通りだ。用は済んだだろ、ティベイのとこに行って聞き間違ったことを確かめてくるといい」
イゾウはAと二人で部屋に閉じこもってしまった。マルコはこれ以上は無駄だと判断してイゾウの言った通り、ティベイのもとへ向かった。
「お、生きてたか」
「殺されるかと思ったよい」
「悪い悪い、まさか気づかれるとはな」
「俺の気配は消せてもAのは消せないからな。何か動きがあったのがわかったんだろうよい、仕方ねえ」
ティベイはコーヒーを用意して、大量の砂糖を入れた。
「んで、Aは大丈夫だったのか？」
「見たところ健康そのものだな、お前とAを接触させないための嘘と見て間違いないだろうよい」
「なんで…ッ！」
甘いコーヒーを一気飲みしてティベイは俯いた。マルコも笑い飛ばせる雰囲気ではない。
「Aはどう思ってんだよ…！」
「前までは抵抗していたが…今はなんの文句もない様子だったよい。嫌がってはないんじゃないか？」
「マルコは、ほんとにそう思うのか？」
「…まあ、いつも通りって感じだったしねい」
「フンッ、馬鹿だな」
「ゔっ…なんだよい」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 23人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：はなやぎ | 作成日時：2023年10月18日 7時
