病を治すはずなのに【イゾウ】 (ページ23)

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病ページ23

イゾウにとってAの言葉は衝撃だった。自分のためであったことは自覚していた。しかし今までの行動は全部、自分とA、二人のためのものだと信じていた。

いつしかAのためという思いは薄れて、自分のことばかりになっていたことに
今、気がついた。

「そうかも、しれない…」

『私は多分前からそれに気づいてたよ。でもそれで良いって思ってた。幸せなら』

Aはイゾウから一歩離れた。

『私、幸せじゃなかったみたい』

イゾウはハッと顔をあげた。Aの表情は悲しそうで、しかし笑っていて、どんな感情なのか読み取ることはできなかった。

周りの仲間達は少し驚いたようにAを見ている。まさか、Aがそんな風に言うなんて思っていなかった。
この数十分間でAは考えの転換を起こしていた。今まで違和感を感じていたことがスッキリと自分の心に落ちてきていたのだった。

「俺のせい…？」

イゾウは窺うようにゆっくりと言った。声は震えていて、自分が信じて止まなかった行動が徐々に否定されていくのが気持ち悪かった。

『私のせいでもある』

イゾウは敢えてイゾウのせいと言わないAに酷く傷ついた。
こういう場面ですら、自分は本音で話してもらえないのかと。

『受け入れていた私のせい。それが幸せだと信じてた』

「何が言いたい。俺が嫌なら…」

さっさと言え

とは言えなかった。やはり怖かった。自分を愛してくれる人、自分が愛している人が離れていくのが恐ろしくて、嫌で、悲しくて、辛くて。

もう分からない。Aの考えていることも、仲間たちも、自分のことも。
早く、早くこの場を去りたい。できることならAを連れて。

イゾウはそう思った。