病を治すはずなのに【イゾウ】 (ページ21)

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体当たりページ21

イゾウ視点

なんでそんなこと言うんだ。俺は誰よりもAを想っているのに、どうして俺よりティベイや仲間たちの言葉を信じる。

許せなかった。俺よりティベイの方が良いと言われたみたいで。
誰もいないところで二人で話したい。そうしたらAももっと冷静に話を聞いてくれるはず。「離して」なんて言わないで、俺の言葉だけをしっかりと腕の中で聞いてくれるはず。

『イゾウさん！手、痛い！！』

「…！悪い！」

手を少し緩めた瞬間、右側から体当たりをされた。壁に激突した痛みとAの手を離してしまった不安で歯を喰いしばる。そして体当たりしてきた仲間を睨んだ。

「何しやがる！」

「甲板に戻れ！！」

Aの背中を押して俺に向き合う仲間数人は冷や汗を流していた。

「退いてくれ…Aに何をする気なんだ！」

「それはこっちのセリフだ！冷静になれ！ひでェ顔しやがって！」

初めて自分が顔を歪めていたことに気がついた。

仲間たちが立ちはだかるが、押しのけて甲板に戻る。ティベイたちと、マルコやサッチがいた。サッチはAの肩を掴んで涙ぐんでいる。

本能が言っていた。Aを守れと。
簡単に触れるやつはAを怖がらせる恐れがある。それが例え仲間だとしても。

手を握って飛びかかった。Aが目を見開いて何かを叫んでいる。サッチを押し飛ばして俺と向き合う。
サッチを庇ったのか？

振りかざしてしまった拳は止まらない。

「A…ッ！！！」

やめてくれ、避けてくれ。
このままではAをこの手で傷つけてしまう。

時間にしてコンマ数秒。Aを殴ってしまうと理解した瞬間のことだった。振りかざした手に痛みが走った。

「…っぶねェな！！Aを殺す気かよい！」

片脚だけ鳥になったマルコの爪が手に食い込んでいた。赤い血が青い鳥の脚に線を引いて流れていた。

『うわぁぁ……マジで死ぬかと思った』

「お前は怯えてたくせに何だよその緊張感の無さ」

「なんで庇ったりしたんだ。サッチなら死なねえだろ」

『必死だったんだよ！イゾウさんがこうなったのは私も悪いし、落とし前つけないと』

マルコの脚がゆっくりと離れた。痛みがじんわりと広がってきた。
Aも涙ぐんでいるが、もう怯えたような目はしていなかった。みんなと楽しそうと言っていいのかは分からないが、生き生きと話していた。