出航2 ページ3
イゾウ視点
サッチの声を聞いて二人分のご飯を取りに食堂に出た。
「いたいた、イゾウ！今日ティベイが来るらしいぜ」
「そうなのか、久しいな」
「ああ、準備しとけってさ」
「準備することあるか？」
「知らんけどその心づもりで、あとは天候回復を祈っといてくれ」
「晴れんだろ？どっかで聞いた」
豚カツを皿に取りながら会話を交わす。そういえばAはティベイと仲が良かったな。
「マルコ」
「ん？」
「最近眠れなくてな」
「またかよい。あんま薬に頼んなよ」
熱が治ってから不思議と眠れなくなっていたので慣れたようにマルコから薬をもらった。薬に頼るのもよくないとのことで、マルコがその頻度に関しては調整してくれていた。
「Aの様子はどうだ？」
「特に変わったことはない。最近は本の面白さに気づいたようだな」
「運動不足のような気がしてならないがねい」
「部屋で筋トレやってるぞ」
卵スープを用意してマルコから離れた。そして背中でお盆を隠してもらった薬を半分卵スープに溶かした。もう半分はあんかけのあんに溶かして、何事もなかったかのように湯気のたつ料理を両手に部屋に戻った。
『いただきます』
Aと共に俺も箸を進めた。段々と一口が小さくなっていくAを注視しつつお茶を飲んだその時、Aがふらりと椅子から落ちそうになったので慌てずに抱き止めた。
「おやすみ、少しだけ待っててな」
外は段々と雨が止んできていた。まあだからティベイと会う約束をしたんだろうけど。
残念ながら俺にとっては邪魔でしかなかった。別にティベイが嫌いなわけではない。むしろ俺より長い海賊歴を持つティベイはとても頼りになる。しかしAがティベイに会うと知ったら絶対に会いたいと言う。外に、しかも夜に出すわけにはいかない。
薬も効きやすいAは多分このまま夜も目を覚まさず朝に起きるだろう。明日の朝だけティベイとAが鉢合わせないように気をつければ大丈夫。
Aをそっと布団に寝かせた。揺れも収まってきたので特別気にすることもないだろうが、万が一何が落ちてきても怪我をしないように敷布団を引っ張って少し移動させた。
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作者名：はなやぎ | 作成日時：2023年10月18日 7時
