病を治すはずなのに【イゾウ】 (ページ20)

今日:11 hit、昨日:11 hit、合計:2,989 hit

策略ページ20

A視点

真っ暗になったと同時にいつもの匂いを感じた。イゾウさんに抱きしめられたのが分かった。

「何を企んでやがる！コソコソと…Aをどうする気だ！」

背中にまわされた手に力が込められた。絶対に離さないという確固たる意志を感じて、不覚にもときめいてしまう。

「私たちは二人の幸せを願ってるだけだ…残念ながら今のアンタに私の友だちを任せることはできない」

「どういうことだ」

怒りが滲み出ているイゾウさんと、イゾウさんを睨むティベイ。強者二人を前に私はどうしたらいいのかわからない。イゾウさんの顔を見上げると、敵意をむき出しにしていた。覇王色使える説提唱されてもおかしくないくらいの圧を感じて身震いした。

「アンタがAの幸せを奪っていることに気がつかないのかよ！」

「俺はAを縛っているわけじゃない。嫌だったら逃げられるようにしているはずだ」

イゾウさんのそばにいるのは私の意思だ。逃げようと思えばいつでも私は外に出られた。でも…

『イゾウさん、離して』

「なっ…」

イゾウさんが目を見開いた。衝撃を受けたような顔で恐る恐る私を解放すると、行き場の無くなった手がだらりと落ちた。

「離して、ほしいのか…？」

『今お話しするためにね。嫌いになったとかそういうのじゃないよ』

一歩下がってイゾウさんと距離をとる。近づいてくるようなことはしない。イゾウさんはいつもそうだ、私が何をしても悲しむだけ。

『私、やりたいことが沢山あるの』

「でも危ない、だから…Aだって惨々な目に遭ってきて分かってるだろ？」

『違う、イゾウさんは…自分のために言ってるだけだよ。私のためじゃない』

イゾウさんは黙ってしまった。流石に沈黙が長くなってくるとちょっとこの空気どうしようとか思ってしまう。
何か言ってほしい…

「行こう」

急に手を掴まれた。そして引っ張って部屋に連れ戻されそうになる。
しかしイゾウさんの腕を掴んだのはティベイ。イゾウさんは一度ティベイを睨むと思いっきり振り払った。ティベイも弱くはないものの、単純な力では敵わなかったようだ。

「二人で話そう」

イゾウさんの手に力がこもった。本当に話すの？なんで優しい目で見てくれないの？みんなのいるところではできないようなことなの？

怖い

ただそう思った。